[コメント] 借りぐらしのアリエッティ(2010/日)
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素晴らしい映画だったかというとそうではないが、夏の暑い一日に映画館でこの映画を観て、なんだか和んだ気がした。そういったリラックス効果を感じられること、それだけで十分なんじゃないかな、とふと思いました。
近年のジブリ映画に多いのだが、物語の起伏の少なさはこの『借りぐらしのアリエッティ』も同様だった。観賞後、「結局手術は成功するの?」とか「アリエッティたちはどこへ行ったの?」とか、そういった疑問が出てきてもそれは仕方がないことだと思う。ただ、物語重視で作られている映画ではないように思えたので、そこは余韻として残せばいいように感じた。久石譲作ではない音楽は、その美しい旋律がこの映画にアロマテラピーかのような癒しの効果を与え、それが映画の雰囲気を決定付けた。その雰囲気に委ね、「我が家にも小人がいたらステキだよな〜」とほんのり思うだけでいいんじゃないかな、といった気持ちにさせられたのだ。
ある種、ヨーロッパ映画的な雰囲気を感じさせてくれたのが、僕には好感だった。絵作りに関してはどのシーンを取っても目を見張るものがあり、スタジオジブリの2Dアニメーションが、ピクサーやドリームワークスの3Dアニメにも引けを取らないものだと実感させてくれる好例がこの映画であるように思えた。カラスが窓に突っ込んでくるシーンに代表されると思うが、小人にとって大きな生き物である動物たちの描かれ方が、バラエティに富んでいて実に良かった。加えて、大粒の涙を流すアリエッティの表情など、ビジュアル面演出に緩急がしっかり効いている。物語に大きなヤマがあるとは言えないので、美しい絵作りの連鎖が、じっくり心に残っていく感じが、どこかヨーロッパのアート映画のような感じに思え、いい具合に浸ることができたのだ。
こういう美しいシーンを流れるように見せられると、宮崎駿以外のクリエーターも悪くないものだと感じさせられる。僕の場合、『風の谷のナウシカ』や『天空の城のラピュタ』の幻影を追い続けているわけではないので。ある意味、古風ではあるけれどスタジオジブリの次世代を感じられる作品になるのでは、と期待が持てる映画でした。
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