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[コメント] デッドフォール(1989/米)

この映画の前半が面白いのは、スーツが意外とスタローンに似合っていたことに起因する。この映画の後半がいまいちなのは、スタローンがそのせっかくのスーツを脱いでしまったことに起因する。
kiona

 “ランボーなんざ目じゃないぜ!”から始めたのだから、最後までスーツを脱がないような展開を練れたなら、スタローンも文句の無い新境地を開けただろうし、傑作アクションにだってなれたはずだ。残念。

 ちなみにスタローンファンでも、こういう時はカートを応援したくなるのだが、“食われてよし”のスタローンの王道が始まったのはこの映画かもしれない。

 この映画のカート・ラッセルは活き活きしているが、相手がスタローンであればこそなのだ。『テキーラ・サン・ライズ』におけるメルギブとの対決を見れば解る。対決ものになると、スターというのは往々にして食われまいとして、相手を萎縮させるほど血走った演技を見せるものだが、クレジットが後に来る者の面目が立てられることは少ない。

 たとえばデ・ニーロパチーノの共演者達。『レナードの朝』のロビン・ウィリアムズ、『フランケンシュタイン』のケネス・ブラナー(監督だったから別にいいんだけど)、『ザ・ファン』のウェズリー・スナイプス、『スリーパーズ』のブラッド・ピット、『RONIN』のジャン・レノ、『ザ・ダイバー』のキューバ・グッティングJr.、『15ミニッツ』のエドワード・バーンズ、『スコア』のエドワード・ノートン、『ゴッド・ファーザーPART?』のアンディー・ガルシア、『ディック・トレーシー』のウォーレン・ビーティー、『セント・オブ・ウーマン』のクリス・オ・ドネル、『訣別の街』のジョン・キューザック、『ディアボロス』のキアヌ・リーブス、売り出そうとした若手の名前で故障者リストが出来上がる。

 大御所の鼻息に負けない連中もいる。『フェイク』のジョニー・デップや『インサイダー』のラッセル・クロウなんかがそうだ。若手じゃないが『ワグ・ザ・ドッグ』のホフマンなんかは、さすがにデ・ニーロにだって食われない。

 スタローンと競演するルーキーに、そんな珠はいない。スターと競って潰されればそれまでのファーム上がりばかりだ。そういう彼らまでが、スタローンと競演すると何故か輝き、その後で映画界に自分達の居場所を見つけていく。相手の良さをいかんなく引き出しちゃうスタローンのそれは、俳優としての才能なのだ。『追撃者』では、齢五十を過ぎたスタローンがコギャルのレイチェル・リークックと対等な掛け合いを演じているのを観て、涙が出ます。

 だが、バンデラスに食われた『暗殺者』をバンデラスの映画と言う人はいない。それでもスタローンの映画なのだ。

 ファーム上がりにとっての頼れる兄貴、スタローン。たとえつまらん映画に出ても、俳優だけで観に行こうって気になる極めて稀有な俳優なのです。

(評価:★4)

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