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[コメント] 幼な子われらに生まれ(2017/日)

人が人との暮らしをもつというのは、畢竟後悔の積み重ねか。そんな認識におとなが敗れるのは、後悔し続けた暮らしそのものに後悔したときだろう。宮藤官九郎寺島しのぶも、その事実に敗北しながら決して醜いばかりのろくでなしではない。「家」制度の滅びとともに、家庭には居づらい人々が顕在化し続けているだけなのだから。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







やはり子供への無私の愛情を持ち続けられる浅野忠信には、誰でもなれるわけもないのだ。子供のために社会での成功を捨て、自分の生き甲斐を子供との暮らしとし続けるためには、確固たる使命感はやっぱり必要だし、それを持てない親たちが子供に手を挙げ、場合によっては殺してしまうのだ。そして、そんな破局を招くだけの自分の弱さを明らかにしたくないおとなは子供をつくるのを放棄するのだ。

弱いおとなの独りである自分は、それだからこの映画を見続けることが辛かった。長女の義理の親への否定や、次女や実の娘の巧まざる思いやりが辛かった。だから、子のために大人であり続ける浅野には光明を見る思いだったし、そんな思いが無責任な他人事意識からくることを思い知らされた。三島有紀子の残酷な視線をここからは感じる一方で、親たるための掟に従えず敗れ去る大人たちの善良な不器用さをえがくことで、彼女は現代の負け続ける親たちをも見捨てず寄り添ってくれるのを感じた。だから、終幕の光明を自分もまた喜べたのだろうと思っている。

(評価:★4)

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