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[コメント] キッズ・リターン Kids Return(1996/日)

「成長しない」映画。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







十年以上前の前回観賞時ほど共感を覚えなかったのは、単純にこっちが歳をとったからだろう。もはやハヤシさんすら年下の哀れな凡人にしか見えない。ガキどもの成長を描いた映画だけど、この映画自体、成長していない。いや、けなして言っているわけではない。少年期の僅かな期間に見せる成長と挫折をそれだけ鮮やかに切り取っているということの証左だろう。

金子賢みたいなのがチンピラの道に染まっていくあたりはリアリティがあるけど、そこまで出世するタマには見えない(演出できていない)ところがやや惜しい。

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(以下、前回観賞時のreview再掲)

金子賢は学生時代実際こんなヤツだったに違いない。

…と思わずにはいられないほどのハマリ役。

それはさておき、この映画には何とも言えぬ現実感を感じてしまい、最初から最後まで見入ってしまった。もちろん寓話的にデフォルメはされてはいますが、自分の高校時分(男子校です)を思い出しても、こんなヤツら(主役の二人だけでなく、周りにいるヤツらも含めて)実際にいたよなー、という感じ。そして、そいつらがここに描かれているような人生の歩み方、挫折の味わい方をするってのも、なんだかとってもリアルに感じてしまいます。こういうのをホントに上手に表現することのできる北野武って人はやっぱりただもんじゃないな、と。

場面としてはボクシングジムのシーンが好き。二人がスパーリングして、トレーナーが「青の方がセンスあるじゃねえか」ともらす場面、素人目にもホントに安藤くんのカウンターの当て方が上手に見えたので感心。あれは吹き替えじゃないですよね?有望な若手をじわじわとおとしめていく「ハヤシさん」の存在も「いるいる、こんなオッサン」って感じで、ニヤリとしてしまう。

で、ラストの台詞についてなんですけど。ヤツらだって「終わっちゃった」とか「始まってない」なんてホンキで思ってるわけじゃないと思う。人生はもう始まってるし、終わってもいない。いろんな挫折を味わうことで、そんな当たり前のことをやっと意識できるようになったんだと思います。「おまえらも成長したじゃん」とあの台詞を軽く聞き流すのが、オトナの態度なんかなー、と思いました。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Myurakz[*] サイモン64[*]

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