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[コメント] となりのトトロ(1988/日)

極上のファンタジー作品に仕上がった要因は、宮崎駿監督が日常描写を描く能力に長けていたから。一級のファンタジーとはこの作品の事を言う。
さいた

「ファンタジーとは、物語の元になるリアルな世界観を創り、そこに非現実的な世界を交える事によって成り立つ物語」(元になる世界は現実に限らず架空世界でも良い)

これが所謂「不思議の国のアリス」が創作された時代からあるファンタジーの定義です。近頃ファンタジーと思われている「ドラゴンクエスト」とか「ファイナルファンタジー」は、この定義からするとファンタジーではないのです。日本では剣や魔法を使う物語がファンタジーと思われる風潮がありますが実は厳密には間違いです。

さて、ファンタジーの定義に即して見事に作り上げられた作品が「となりのトトロ」であります。まず物語の元になる世界観が見事に描かれています。その要因として、キャラクターの日常描写が鮮明で細かく描かれている事。そして背景が本当に存在している場所と勘違いしてしまう程にリアルに描かれている事が上げられます。アニメーター出身の宮崎駿監督は、言葉でキャラの心理描写を表す事よりも、仕草や動きで表現する事に実力を発揮できる人だと思います。アニメでファンタジーの世界観を創り上げるには、この作画による描写が大きく関わってくるので、自然でリアルな描写が描ける宮崎監督は適材適所なのです。

そして日常の世界観を構築した後、いよいよ奇想天外なキャラクター達、”まっくろくろすけ、トトロ、猫バス”が登場します。このデザインや発想がファンタジーの核である”ちょっと不思議な体験”をさせてくれるのです。これでファンタジー作品として成立した訳です。

これだけ素晴らしいファンタジーは後世の子供達に伝えるべきだと思います。しかし唯一残念な事は、糸井重里みたいな下手な声優を抜擢した事です。作画にヘタウマを許さない宮崎駿監督が、なぜ声優だけはヘタウマな素人を使うのでしょうか。理解に苦しみます。トトロファンとしては残念でなりません。

(評価:★5)

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