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[コメント] 非常線の女(1933/日)

これは掛け値なしの傑作。全カットが驚くべき美しさだ。サイレント期の小津にとってルックの完成という意味での代表作は他の作品になるだろうが、しかし本作の視点の快さは抜きん出ている。ヴァンプ役としての田中絹代の違和感など取るに足りない瑣末なことだ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 例えば、ドアへ向かって靴を投げる、ドアにあたって落ちた靴から部屋を横に移動し、カフェのバンド(回転するベース)につなぐカッティングの粋なこと。或いは、タイプライターを打つタイピストの横移動の格好良さ。クライマックスで屋内を逃げる田中絹代岡譲二のシーンも移動だらけだ。まるでウィリアム・A・ウェルマンのような小刻みな前進後退移動まで見せる。この時期、小津はローアングルに拘ってもフィクスには拘っていないのだが、しかし本作ほど視点の自由を獲得している作品は他にないように思う。本当に素晴らしい。

#ボクシングジムには『チャンプ』のポスター。三井秀男の部屋には『西部戦線異状なし』のポスター。ラストシーンで登場する警官達の一人は笠智衆

(評価:★5)

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