[コメント] 007 スカイフォール(2012/英=米)
私としては、本シリーズ中、もっとも見応えのある作品だと考える。もう書くことが読めてしまっているのではないかと思うが、本当に全くロジャー・ディーキンスの映画なのだ。それは大きくは三つのシーケンス、そして、その三つとも、夜の光の場面だ。
見た人ならもうお分かりだと思うが、ロケーションで云うと、上海、マカオ、スコットランド(スカイフォール)の三カ所だ。上海の青い光。ビルの中のガラスのパーティションと向かいにあるデジタルサイネージから投影されるクラゲの映像。その中での狙撃と格闘。マカオはオレンジだ。海の上の花火と無数の灯籠流し。宮殿イメージのカジノ。カジノ内の美術も素晴らしい。そしてスカイフォールにおける寒色と暖色の対比。燃えさかる炎の朱色と煙(靄)をバックにした男のシルエットの画面造型。全くこれぞ、ディーキンス、といった画面なのだ。シリーズ中、ディーキンスが担当しているのは本作のみ、というのも本作の価値を高めている。撮影監督が、これだけの違いをもたらすことができるのだ、という証明になっている。
多分、シリーズの愛好者から見るとダメ出ししたい点が多々あるとは思いますが、ワタクシ的には(シリーズ愛好者では全然ないですが)、ボンドガールのボンドガールらしさがほとんど演出されていない点が残念なのと、ハビエル・バルデムの行動原理(動機)のスケールの小ささには白けてしまう、というのが、正直なところでした。ただし、このようなウィークポイントも、撮影の良さで、ほんの瑣末な事柄に思えるのだ。
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