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[コメント] イレブン・ミニッツ(2015/ポーランド=アイルランド)

スコリモフスキの最新作は11分間という限定された時間を81分で描いた、10人を超える登場人物の群像劇。そうなると当然ながら、時空の錯綜が頻繁に表れる。さて、映画はこのような知的な構成だけでスリリング足り得るだろうか。
ゑぎ

 確かに先ほど起こった事象(例えば人の行き来だとか、ちょっとした会話だとか)が違った角度から反復される見せ方は最初の内は面白い。しかし、同じ場面を何度も見せられると、演出に工夫がないと飽きてくる。例えばホテルの廊下で嫉妬に狂う男の部分なんかは、ちょっと辟易、という感もある。とは云え全体に音の使い方で驚かされる場面も多く(飛行機の騒音に続けて鳩が鏡へ激突する!)、それに何と云っても、女優役パウリナ・ハプコの圧倒的な魅力で興味を引っ張られた。或いは、あっと驚く「偶然」を描いた映画でありながら、撮影現場はエキストラを含めて偶然を廃した完全な世界の創造を目指していたはずで、その成果をトレースする、というのはある意味スリルに機能する。

 ラストで全員が収斂する展開については誰もが驚愕し、人によっては作り物過ぎて嫌悪し、人によってはその人を食った図太さに快哉をあげるだろうが、このような事件も日常の一コマである、という提示なのだろう。警備室の液晶ディスプレイに付いた「蠅のクソのような」キズや、画用紙に意図せず落とした絵の具の染みと同じようなものなのだ。これらと同じ、ということをラストのラストで映画の画面として提示されるのだから。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)irodori けにろん[*] ぽんしゅう[*] セント[*]

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