[コメント] 燃ゆる女の肖像(2019/仏)
あるいは、風の強い日に顔を覆うマフラー。そもそも、マリアンヌ(画家)の正体は、エロイーズに隠され、彼女の行いも成果物も、隠蔽工作が図られる(しかし、中盤で潔く吐露される)。プロットでもう一つ特徴的なのは、伯爵夫人の不在時に、隠れて行われる情交と堕胎。他にも、画面イメージで非常に印象に残るのが、エロイーズとマリアンヌが、最初にお互いの顔を見ては目をそらす、ということを繰り返す画面。葦の原で3人の女が同時に出現するカット(しゃがんだ状態から立ち上がるカット)。そして、まるで生き霊のような、白いウェディングドレスのフラッシュフォワードの見せ方。
多分まだまだあって、女性には禁じられた画題。逆に女性だけの(男子禁制?)の夜の祭り(焚火、コーラス)、父親の名義で絵画を描く(真の名義を隠す)、それをいとも簡単にばらす、といったことも隠蔽と暴露のモチーフだろう。
また、本作のカメラは、画家マリアンヌの世界を出ない。彼女が被写体か、彼女の見た目がほとんどだ。少なくも、彼女から離れた場所の被写体が映されることはワンカットもなかったのではないか。つまり、マリアンヌ以外の世界は全て隠蔽されている、ということができるだろう。彼女が見ることができない世界は映らないのだ。
という訳で、本作は、二人の女優の映画ではあるが、マリアンヌ役のノエミ・メルランの、圧倒的な顔の映画ということもできると思う。美人だが、ちょっと癖のある美形で、彼女が絵を描く時の顔、視線に見惚れながら見た。もっと、ずっと見続けていたいと思った。エロイーズ役のアデル・エネルの方が有名だし、セリーヌ・シアマのミューズでもあるのだろう、本来、マリアンヌ以上に美味しい役なのだが、ノエミ・メルランに比べると精彩を欠いたと思う。もっと美しく撮ってあげなければダメだと思った。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。