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[コメント] ワン・セカンド 永遠の24フレーム(2020/中国)

映画及び映画フィルムを巡る映画。邦題も映画ファンの心をくすぐるが、感傷的過ぎてワザとらしくも思う(邦題のことです)。開巻は砂丘。砂が舞う景色が壮観だ。男が一人歩いて来る。劇中、この男は名前を呼ばれることが無いので、以降「男」と表記する。
ゑぎ

 「男」−チャン・イーが辿り着いたのは「第一分場」と呼ばれる場所。ある映画の上映を見るためにやって来たのだが、既に上映は終了している。こゝに、フィルム(缶)を盗む少女(初見時は少年に見える)「リウの娘」−リウ・ハオツンが出現し、序盤はフィルム缶を巡っての争奪が描かれる。

 なんだかんだあってフィルムは「第二分場」に到着する。なんだかんだの部分は詳述しないが、第一分場から第二分場への道中はロードムービーになる。こゝで一見繋ぎミスのような変な繋ぎが見られる。最初、進行方向は画面右から左へのイメージで繋がれるが、途中、フィルム缶の争奪により、左から右へ逆行するような感覚になるのだ。元の第一分場に戻るんじゃないの?と思わせる繋ぎだが、多分、引っ掛かるようにワザとやっているのだろう。

 そして第二分場の映画館というか映写施設の技師ファン−ファン・ウェイ (「ファン電影」と呼ばれている)が中心となってフィルムのメンテナンス及び上映が行われる場面が圧巻の臨場感、空気感の醸成だ。上映されるのは『英雄子女』というタイトルの戦争映画。これが面白そうな(ちょっと笑えそうな、という意味でもある。とってつけたようなドリーショットが目に付いた)映画なので、断然見たくなった。

 さて「男」がこの映画の上映を追っている目的、「リウの娘」がフィルムを手に入れたい動機、あるいは、それらが達成するのかといったことも割愛しよう。ただし、終盤は「男」「リウの娘」らの(「ファン電影」「リウの弟」も含めて)キャラクターの一貫性には難があると私は思った。それが面白いという向きもあるだろうが、過剰なリアクションが多過ぎると思う。そして、ラストは張藝謀らしい、ちょっとイケズな帰結が待っている、ということは書いておこう。しかしそれは「男」と「リウの娘」の今後の関係を示唆するものだろう。それと「リウの娘」の変貌の見せ方は、本作のストロングポイントで間違いないが、もうこの監督のネタのように感じるではないか。臆面もない(あっけらかんとし過ぎてないか?)、と思ってしまった。

#本作の日本語字幕では「労働改造所」という言葉が使われていたが、オフィシャルサイト含めて多くの映画サイトでは、なぜか「強制労働所」という言葉に変えられている。かなり伝わるニュアンスが違うと思うのだが。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] ペペロンチーノ[*] ぽんしゅう[*]

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