製作者サイドの意図は分からないが、もし、人は秩序立った平和な社会から離れ、弱肉強食の極限状態に置かれた時、何を糧にして生きるのか？大切なことは何なのか？みたいな問題を問うメッセージ性の強い作品を作りたかったのなら、失敗作だと思う。

　ストーリーも映像も、まるでロールプレイングゲームを見ているかの様に展開する。そのため、血の吹き出るようなアクションシーンでも、痛みや苦しみを感じることなく、単純に楽しめる（この感覚は、どちらかと言えば『ダイ・ハード』に近いと思う）。良いか悪いかは別にして、個人的には面白かった。

　一方で、各々の登場人物が抱えている苦悩、悲しみ、怒り等の心理描写は、かなり甘く、ハートに伝わってくるモノは皆無に近かった。メッセージ性は希薄で、何かについて深く考えようという気など全く起きなかった。Ｒ指定が国会でも問題になった位、話題を提供した映画だが、残虐性や狂気性といった面は、感情表現が希薄なため、それほどではない。『ダイ・ハード』をＲ指定にする必要が無いのなら、本作もＲ指定にする必要は無いだろう。

　というわけで、ゲーム感覚に富んだ映像は、面白かったが、問題作というほどのストーリー性は皆無に近かった。もし、少年少女に、殺しや暴力、秩序や平和について、もっと真剣に問題提起したいのなら、私は、本作よりも『蝿の王』を薦める。