役者の演技、脚本の上手さ、主人公の部屋でもあるガレージのシャッターの開閉の見事さに代表される演出の冴え、どれをとっても最高水準にあると思う。

だが、映画のすべてを監督の完全な支配下に置いたうえで魅せる、という点では、ところどころに甘ったるい箇所が目立った。他が完璧だったゆえに、余計にその甘さが目立った。

「あいつを殺してやりたい」と思わなかったことがある人間がいるだろうか。

その青春の、今から見れば屈折したエネルギーの爆発をこれだけ正面から描きながら、その切なさを際だたせる。主人公の家庭環境、学校での人間関係がやや現実離れに見えても、それをカバーして余りあるのが中村梅雀ではないだろうか。

「この人間には突っ張り切れない」と覚悟をさせる、そんな雰囲気がラストに向けて映画全体を大きく支配していく。

こういう構成の中で、光り輝く二宮和也は素晴らしい出来栄え。そしてそれに華をそえた松浦亜弥は脚本に助けられた観はあるが、それでもいかにも彼女らしい雰囲気を崩さなかったのは立派の一言に尽きる。この姿勢を貫けば、女優として大化けするのではないかという予感があった。