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[コメント] イカとクジラ(2005/米)

ママの日か、パパの日か。それが問題だ。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 アカデミー脚本賞ノミネートという触れ込み通り、シナリオは導入部から実に鮮やか。幕が上がってからわずか数分で4人家族の勢力図と問題点を見事に描き出している。

 この作品は脚本も担当したノア・ボームバック監督の自伝的な物語だそうだが、両親の離婚という子どもにとってはヘビィな問題を扱いつつも湿っぽさは皆無。あくまで客観的に家族の姿を映す視点がたいへん心地よく、散りばめられた小ネタも楽しい。

 そして何しろこの家族、離婚してしまう両親2人が2人とも見事にロクでもないのだ。小市民的で、エゴと虚栄心の塊で、欲望の虜で──これはまさしく、観客である私の姿だ。そして息子たちもまた困ってしまうほどロクでもないのだが、真っ向から母親を愛していたり、本気で父親を尊敬したりしている。そして自分自身と向き合いながら、周囲の変化をゆっくりと受け入れて成長してゆく。これもまた、かつての私の姿ではなかったか。

 ああ、なんとリアルな。

 このロクでもない家族4人それぞれの感情が互いに交差するたびに何ともイヤな色の火花が散り、その姿はヒリヒリと痛々しく、そしてすこぶる愛しいのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)甘崎庵[*] ナッシュ13[*] MM[*]

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