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[コメント] ヒックとドラゴン(2010/米)

展開はとてもオーソドックス。それでも、これだけ揺さぶってくるというのはその見せ方が上手いという事。実写と見紛うシーンが幾つか散見され、その意味でも驚いた。
Master

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3D、吹替版で鑑賞。

共同体の中でお荷物だった主人公が、何らかのきっかけや方法論によって共同体が抱える難問を解決し成長するという流れは、別に珍しいものではないと思う。極めて標準的な話である。本作では、共同体自体・世界全体の成長という「おまけ」をつけ、ドラゴンの飛行シーンという魅力的な味付けを加えているため間違いなく盛り上がる。

また、本作が上手いのは、登場人物のあらゆる行動に不自然さがない事である。最終試験のシーン。相手のドラゴンを手なずけようと近づくヒックを見てストイックが中止を決断し、「助け」に入り最終的に絶縁を告げるまでの流れもそれぞれの行動原理に忠実なまでのことであり、全く不自然さはない。そこから最終的にストーリーの舞台が村に戻るまででそれまでの伏線は回収される。方法論は違えども、ヒックはドラゴンと戦うわけであるし、勝利も収める。その結果として、共同体の中で勇者として認められるわけであるし、ヒックを見てドラゴンとの共生を選択するよう共同体・世界が「成長」するのである。この範囲にまで無理なく無駄なく結論を広げた手腕は、素晴らしいと言う他ないだろう。

あと、特筆すべきは爽快な飛行シーン。本作の首脳陣は『魔女の宅急便』や『紅の豚』の飛行シーンを参考にして、本作の飛行シーンを作り上げたそうである。そういえば、紅の豚の中にある工場で修理をした後の飛行艇をポルコがフィオのアドバイスを受けて裏の川から飛ばすシーンと、本作でトゥースが初めてアスティを乗せてアクロバット飛行をし、彼女が謝罪した直後に遊覧飛行するシーンはどことなくシンクロしている印象を受けた。日本のアニメがこういった良い波及を与えたように、今度はピクサーやドリームワークスから日本アニメが色々吸収する番になっているという事なのだろう。

唯一「欠点」といえるのは序盤の饒舌なヒック。端的に言って五月蝿い。ただ、それも後半の伏線とも言えるので、苦手な方も少し我慢していただきたいところ。ラストには爽やかな感動が待っているのだから。

※参考 http://eiga.com/movie/54255/interview/

(2010.08.13 横浜ブルク13)

(評価:★5)

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