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[コメント] やがて海へと届く(2022/日)

着地点に迷ったのか、着地点までの道程の作り方に迷ったのか、ある種の「使命感」を頼りに突っ走った結果、いびつなものが出来上がってしまった印象である。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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原作未読です。

なんとなくだが意識しているのは『横道世之介』かなと思いながら観賞していたが、本作が持ちうるポテンシャルを引き出し切れていないのではないか。

すみれ(浜辺美波)が行方不明になっていること、真奈(岸井ゆきの)がすみれが行方不明になっていることを消化できてないこと、そしてその原因が東北震災であること、これらをどのタイミングで示すかによって趣がかなり変わるが、このあたりが上手くいっていないように思う。

キーの情報を後出しすることで「答え合わせ」させる手法もあるが、劇中の人物はそれを承知の上で話を進めているはずで、本作の語り口はご都合主義的な印象も残る。

あとは楢原(光石研)の自殺エピソードにどういう意味を持たせるかがポイントになるが、意外とそこは軽視しているように見える。これはもったいないのではないか。すみれが序盤で言う「私たちには、世界の片面しか見えてないと思うんだよね」というセリフ、真奈が言う「思っていたことは本人にしかわからない。それを他人が決めるのは傲慢だ」(これは大意です)というセリフの「実像」をより示せるはずと思うからである。

これらのセリフのわりに終盤のすみれ視点で語られるこれまでの諸々に真奈視点の情報と変わるところが遠野(杉野遥亮)関連のものぐらいしかないのも残念だった。

これらと別に気になったのは力点の置き場。アニメやいわゆる震災の「語り部」にそこそこの時間を割いているが、映画全体を考えた場合にあまり効果的には思えなかった。

アニメは震災表現を実写でやるのが難しいという事だろうし、語り部はすみれがカメラを良く撮っていたという設定と別に東北震災を「エンタメ」で取り上げる事へのある意味での「本気度」を示したいという事なのだろうが、正直、「浮いている」と感じた。

震災から「一歩進む」話がやりたかったのだろうが、かなりノイズのある作品であるという印象である。

(2022.04.03 シネプラザサントムーン)

(評価:★3)

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