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[コメント] カイロの紫のバラ(1985/米)

キャラクターが文字通りに一人歩きする瞬間はかなり驚いた。それをまた具体的な事件として展開させるのもいかにもアメリカ映画らしい。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ここには三つの世界が存在する。スクリーンの中の世界、映画業界、市井の人々。それぞれが住む世界は違うので、相容れることはできない。これが現実だ。

スクリーンの中は本質的には時間が止まっている死の世界である。私たちはそれと意識せずに死者と触れ合っている。だからファローが生身の役者を選択したのは順当だった。その相手である役者ダニエルズの「裏切り」もまた社会的な枠組みから考えると無理からぬことだと納得できる。

この出来事で、ファローはなぜ自分が映画を見るのか、何を求めて映画を見るのかを知った。それは己自身を知ることと等しい。遅かれ早かれ誰もが自分自身について知ってしまうのだし、そのことから目を背け続けることは難しい。そして誰もが承知しているように、己を知るということには常に痛みが付きまとう。

ラスト、主体的にスクリーンを見つめるファローの表情は、映画が観客を魅了してやまない本質的なからくりを冷徹なまでに見せ付けている。

(この映画が好き、あの映画が嫌い、と言うおまえはいったい何者なのか?映画は個人を映し出す鏡なんですね。)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)牛乳瓶 ロープブレーク[*] りかちゅ[*] ぽんしゅう[*]

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