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[コメント] つぐない(2007/英)

前半は面白い。ここで「前半」とは、正確に一九三五年のパートのみを指しており、それはつまりシアーシャ・ローナンの出演部分を意味している。これは徹頭徹尾ローナンの映画。それは映画を支えているのは誰かという意味でも、物語が誰のものかという意味でも。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







演出家の演技指導のためももちろんあるのだろうが、この映画を見る限りローナンには稀有の才能があると云ってよさそうだ。それは「所作のひとつびとつが無意味な面白さに溢れている」というジャン=ピエール・レオーと同種の才能である。無駄に速い歩きや首の振り、常に直角の方向転換。あまりに特徴的でありながら、彼女のパーソナリティを浮かび上がらせる方便にしてはとても正確とも効果的とも思えぬ所作の数々。つまり意味のない面白さ。それがローナンのキャラクタを、そして映画を豊かにしている。

むろんローナンが退場した後半にも見るべきところがないではない。その筆頭に挙げるべきはやはりジェームズ・マカヴォイらが浜に到着したシーンだろう。長回しもすごいと云えばすごいが、それ以上に驚愕すべきは、疲れ果てた兵士たちの溢れる浜に遊園地の残骸を置くというスペクタクルな空間造型だ。巨大かつボロボロの観覧車の垂直回転円運動と飛行塔の水平回転円運動。こんな画面は、ちょっと私の記憶にはない。

(評価:★3)

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