コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ダンケルク(2017/英=米=仏)

正しい人間の一つ一つの正確な「行動」を描く。 ノーランの映画は「理系」である。 計算された「視線」と「音」が一定のリズムで積算されていく。 その積み上げが重厚な感動となってこの上なく心地い。 天才の映画。
pinkmoon

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ポケットに手を突っ込んだまま、凛とした佇まいでダンケルクに入港してくる英国紳士の何とカッコイイことか。

この映画にドイツ軍の姿はほとんどなく、一つ一つの戦闘も実際それほど凄惨なものではない。 しかし追い詰められる人間の心理描写と迫り来る恐怖感は半端ない。 海岸への投爆が一定の距離と時間を保ってこっちに迫ってくる現実感。 無駄な語りなどまったく排除した、ソリッドでビジュアルな映画である。

スピットファイアのエンジンが止まってからの滑空シーンが本当に美しい。 海の照り返しの中、自由な鳥のように静かに舞い戦場の空気を変える。 手動で降着装置を出し、海岸に降り立ち、飛行機を燃やす。 一連の動作が観る者をカタルシスへ誘う。

「みんな良くやった」

「帰ってきただけだよ」

「それで十分じゃないか」

戦争という極限の状況下に置かれてなお、人間としての正しい価値観を示す。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)まー[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。