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[コメント] リトル・ミス・サンシャイン(2006/米)

全員でおさなければ走りだせない、フォルクスワーゲンの黄色いミニバス。家族が互いを想う気持ちが、物語を前へ前へと進めていく。
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







トニ・コレットの押し黙ったその瞳をみてくれ。食卓につけば罵詈雑言の飛び交う家族だけれど、一緒にいることの大切さを誰よりも知っていた懸命な母。

嫌味なババアに懇願するグレッグ・キニアの表情をみてくれ。自著の出版のためにもまともに頭を下げられなかったプライドの塊のような男が、娘のミスコン出場のために大衆の面前で膝をついている。

スティーヴ・カレルの全力疾走をみてくれ。大切な誰かのために走るその姿は、メロスの時代から脈々と受け継がれてきた人間の営みの中で最も美しい瞬間だ。

ポール・ダノが挫折から立ち上がるその姿をみてくれ。自分の夢が破れたすぐその後でも人は誰かのために立ち上がることができる。坂道で小さな妹を持ち上げるそのシーンに僕は涙を禁じえない。

アビゲイル・ブレスリンの優しいハグをみてくれ。この年齢の女の子ができる最高の慈愛の表現である。その前のシーンで兄から教わったハグという“無言”のコミュニケーションの力を使って、“無言”の誓いを破った兄自身を再び立ち上がらせる。

アラン・アーキンの強さと真摯さに溢れた言葉を聞いてくれ。負け犬とは戦いに挑む勇気のないやつらのことだ、と堂々と彼は言った。自分の孫娘と息子に力強い愛と勇気を与えてから、飄々と彼は逝った。

この映画は家族の物語だ。そして、勝ち負けよりもトライすることの大切さを讃える、人間の物語だ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)irodori 煽尼采 3819695[*]

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