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[コメント] 仁義の墓場(1975/日)

戦後闇市秩序からの逸脱を完遂した怪物というより、逸脱を図りながら結局「戦後」に絡め取られてしまった濡れた仔犬といった手触り。これも、「こうあるしかなかった時代の人柱的青春」の点描として優れていると思う。哀しき命の無駄遣い。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ヒロポン射った後の虚ろなショットが、挽回できない敗北の予感を決定的に印象づける。時代が常に男を包囲する演出がとても優れていて、警官隊と河田・今井の両組員からの投石シーンが長丁場になるのも悲劇に拍車をかけていい。

ラストで言及される「大笑い、30年の馬鹿騒ぎ」は、時代に抗えなかった自らを含めた人間への嘲笑だろう。アナーキーな反逆の勝利を吠えたものでは到底ないと思う。「結局、家が欲しかっただけ。」(河田の親分を刺してから袋叩きに遭い、逃げ込んだ先の売春宿で「寒い・・・寒いっ!」とうずくまるシーンが秀逸)こちらの評を拝読してから観たため、もっと行ってこい的な人物なのだろうと先入観を持って観たのだが、そういった印象は持たなかった。そして、この物語においてはそれでいいのではないかと思った。

結局、兄弟は殺してしまうけれども、親は殺せない。この辺りにも神話的無常を感じる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ゑぎ[*] けにろん[*] 寒山拾得 ぽんしゅう[*]

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