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[コメント] 一度も撃ってません(2019/日)

15年くらい前、新宿の某天ぷら屋の前に、「なんかすっげえおっかないけど異様にカッコいい、いかにも只者ではなさそうなおっさん」が佇んでいて、恐々遠くから見入ったら石橋さんだったことがあります。まんま、この感じでした。趣味が良いとはとても言えぬファーをまとった見知らぬ女性と夜の街に消えたのです。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







竜馬暗殺』を見たときに実際イケメンで、そういう見方をしてきたことはなかったので意外だった(失礼)のですが、もうこの格好良さは外見とかそういうものとは別次元の、「矜持」から発するオーラによることが明らかでした。同じ年頃のそのへんのおっさんが着てたらそれこそ古臭いし服に着られてんなーと笑ってしまうような、そんな出立ちでしたから、それでも異様な格好よさを放つ理由は、そのようにしか説明できませんでした。

ハードボイルドっていうのは、元来、額面通りにカッコいいものではなく、客観的な事象だけとらえるならカッコ悪いことのほうが多い。この映画の登場人物もそうだったと思います。ただ、問題なのは酸いも甘いも噛み分けた経験値の先の矜持とか誇りとかスタイルであると思います。その良し悪しは関係なく、そのキャラクターがブレずに確立しているかどうか。ほとんどキャラクターによる、キャラクターのための、キャラクターの映画ですが、そのキャラクターをまさに負って立つことのできる、キャラクターそのものである名優の皆さんの演技合戦。アクションこそ映画というのも真実でしょうが、キャラクタあってこその映画、ということも信じています。眼福でした。

「忘れられるのが怖い」とか、この境地の方々がなにをぬかしとるんじゃい、忘れられるわけがなかろうが、と思いましたが、説明されなくてもそれとわかる原田芳雄の不在の大きさに当てられて、どうにも胸に迫ってしまいます。彼らが忘れられることではなく、「いなくなってしまう」ことが怖くて、胸がしんしんすることも予想できたのでこの映画は避けていたのですが、アマ○ンに来てしまったので見てしまいました。端的にとても面白かったですが、バーが閉められるシーンではやはり涙が出てしまいました。わたしの両親より一回りも上の皆さんで、実はそんなに観ているわけでもないのですが、この世代の俳優さんがどういうわけか、はっきり一番好きなのです。スタイルそのものだからなのだと思います。いなくなってしまったら原田さんの時のように涙が出るでしょうが、桃井さんなんかは、そんじゃまたね〜くらいの境地で、手をひらひらさせながら行ってしまうのでしょうか。そんじゃまたね〜と手を振りかえせるくらいの境地に至りたいものです。

・・・何だかえらく年を食った人がしている話みたいですが、まだ私は40に手が届いていません。あんまり映画の話もしていませんね。すみません。

・あのバーの描写は『イングロリアス・バスターズ』の地下室すら想起しましたが、あそこでガチに行かずにシャレで済ますのが、丸山昇一の円熟なんですかね。

・タバコのシーンは全部好きです。

・最後の「z」は、おやすみなさい、ってことなのか、行くところまで行った境地の暗喩なんでしょうかね。

・誰か忘れていやしないか?そう!柄本大先生だ!

(評価:★4)

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