[コメント] ある愛の詩(1970/米)
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角川の先駆だった書籍と抱き合わせの販売商法が揶揄されて有名な作品。そんなことが批判されるほどジャーナリズムがリベラルな時代だったのだ。本邦でも角川商法とか云って揶揄したものだ。今は同じメディアがホリエモンを持ちあげている。
窮屈な会食の件、超ブルジョアの子息であるライアン・オニールが代々の工場について「搾取の歴史だ」と嫌味を云うのに対して、母親のキャサリン・バルフォーは「(跡を継いで、搾取したものを)お前がお返ししなさい」と云う。これはいい科白で、ライアンは是非ともそうするべきだった。時代は反抗の1970年で、組織に入るという発想に立てなかったのだろう。以降も、彼がなぜ父親と和解しようとしないのかイマイチ判らない。ライアンの小ささが無自覚に不幸を呼んだ物語のように見えてしまう。
解説本を読むとイタリアンのカソリックのアリ・マッグローへの差別が描かれていると書かれているのだが、小説版にはそうなっているのか、映画ではレイ・ミランドの所作からそれを読み取るのは難しい。難病ものとしてはさらに身の丈が小さく、白血病の何が問題なのかさっぱり伝わらない。『愛と死を見つめて』(68)の完勝である。
そもそも「ロミオとジュリエット」がベースの小説らしいが、有名な音楽もゼフィレッリ作(68)のニーノ・ロータに似ているように聴こえてくる。美点はニューシネマらしい撮影で雪景色が美しい。ベストショットはライアンの大邸宅をオープンカーからふたりが眺めるショットで、たしかにビビるような大邸宅なのだった。最良の件はヒッピーの影響大である無教会の結婚式だろう。禿げたレイ・ミランドは禿げたジミー・ペイジにそっくり。すでに法科の大学院をロースクールと云っている。
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