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[コメント] ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984/独=米)

「ハンガリー語はよせ」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ハンガリー移民の背景を引きずるのが抽象に堕していない処で、ジョン・ルーリーは名前をふたつ持ち、二か国語を駆使するが故郷のものを使わない。在日コリアンのように。この監督は最初から『ナイト・オン・ザ・プラネット』や『パターソン』を撮る運命にあったのだと確認できる。

本作はギャグ映画だが、丁丁発止のギャグと対極の処で成立している。映画館で並んでエスター・バリントの彼氏のポップコーンをほおばるとか、おばさんがトランプで必ず勝つとか、ハンガリー語で怒っていたおばさんが一人になるとFuckと呟くとか、秀逸なギャグがたくさんあるのだが、それらは黙り込んだ沈黙の時間、曖昧な空気感と一体のものとして提示され、映画全体を包んでいる。それはストレンジャー、移民の時間なのだ。

あと、物語の纏め方がとても上手い。冒頭の電話で、ハンガリーの従妹が泊まりに来るのが判るのだが、物語に必要な知識はなんとこれだけなのだ。観客は物語を追いかける必要が殆どなく、映像美術に集中させてもらえる。

封切時に大阪の、映画館じゃない、公民館のホールみたいなヘンな処で観た。併映が『真夏の夜のジャズ』だった。あれは何処だったのだろう。どなたかご存知ないですか。

(評価:★5)

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