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[コメント] 愛と死の記録(1966/日)

好調蔵原の日活期後半は誠に神懸っている。センチにならざるを得ない題材をドライに物してしまった。広島ロケの借景がどれもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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二度目のふたりの出会いの橋の上は、望遠のキャメラをバスがふさいでいる間だけ科白が中断されるのだが、不思議なほど上手く繋がっている。球場ナイターや屋上の向こうのプールの借景が華麗で、昼と夜の噴水のカット並べる編集が鮮やか、病院屋上の風になびく洗濯物の群れ、病身の窓を叩く大雨、全てがふたりの孤独を際立たせる。ヘルメットなしのバイクでのデートの危うさからしてそうだ。当時の日活モノクロはやはりトップレベルだ。全てから殺伐とした風が吹いているかのよう。

そして収束が素晴らしかった。日常を取り戻した吉永小百合が弟の自転車買いに自転車屋にいるとき、まず不協和音が鳴り出す。吉永は「それ」に気づく。そして音は中盤に「自殺協奏曲」と語られたチャイコの「悲愴」に繋がるのだった。このラストで本作は名作になった。

愛と死をみつめて』との比較は大して意味はないが、あの吉永の包帯の凄まじさは本作にはない。ガンマ線を300レントゲン受けている、200受けている、という表現が印象的(今はベクレルなりシーベルトと云うところだろう)。私的ベストショットは窓枠に座ってずり落ちそうになる弟。吉永に文句いい続ける兄がそこに座り直す鳥瞰の長回しが印象的。当時のレコード店の描写もいい。浜川智子が好印象。芦川いづみは断片で物足りず。後タイトル。

(評価:★5)

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