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[コメント] ニーチェの馬(2011/ハンガリー=仏=スイス=独)

生きることが、希望や野心でなく、ただ、生命を維持するだけのことである寂しさ。素手でほおばる食事は、馬の飼い葉と同じである。取り残された馬と父娘はもはや同じ運命なのである。風の音と執拗に繰り返されるBGMが狂気を駆り立てる。
jollyjoker

機械的或いは合理的な日々の動作 執拗に迫りくる暴風 窓辺で暴風をみつめる娘 毎朝の二杯のパーリンカ 不自由な体の父の着替えを手伝う娘 ベタついた髪とあきらめの時間

こんなわびしい暮らしがあるだろうか。唯一、訪問者に手渡された書物に、娘は人間らしさを取り戻す瞬間がある。考え、思いを巡らせる。じゃがいもを素手で口に運ぶのでなく、自ら考え味わうことの楽しさ。

これは寓話ではなく、人間の生きる希望は、狂気と紙一重であると見た。

必要以上のロングテイクが不思議とイヤではないのは、この一連の動きが、見るものをすんなり映像と同化させてくれるからかもしれない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] DSCH[*] ぽんしゅう[*]

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