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[コメント] コーダ あいのうた(2021/米=仏=カナダ)

2014年のフランス映画『エール!』をリメイクした本作は、オリジナルを超えた!
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかく選曲が良い!マービン・ゲイ、ジョニ・ミッチェル、クラッシュ!そして海と木々の美しさ・壮大さを収めたカメラも良い。

エール!』はコメディ色が強く、主人公であるCODA(Child of Deaf Adults)ポーラの恋や家族との関係が中心に描かれており、エンタメ性が強調され単なるいい話で終わってしまっていたが、本作は、聾者の心情、社会での孤立感、CODAとしての葛藤や自立に焦点を当てたことで、しっかりとしたヒューマンドラマとして見ごたえのあるものとなっている。

実際に聴覚に障害のある俳優を起用したことで、聞こえない人の暮らしぶりや話し方のリアリティが増し、意思疎通の難しさが伝わってくる。

母親が「ルビーが生まれて聞こえる子どもだと分かった時、気持ちが通じ合えるかどうか自信がなかった」と話すのだが、言語の相違、文化の相違がいかにコミュニケーションに大きな影響を及ぼすというセリフだ。

聾者は低音が響く音楽を大音量で流すのが好みであるとか、性についてあけすけであるとか、人の輪の中にいても話がわからずに孤立してしまうとか、常にバカにされているという意識をもってしまうなど、聞こえない人たちを丁寧に取材した成果で特徴をわかりやすく表現されているが、これらは実際に体験してみないと理解できないことだろう。

サウンドオブメタル』は聞こえなくなることに対する受容と克服が主題だったが、本作は、CODAであるルビーと聞こえない家族それぞれが、聞こえない世界の扉をもう一枚開いていくという物語だろう。

子どもの頃から聞こえない家族の通訳として、大人として振る舞わなくてはならなかったCODAルビー。自分の時間を犠牲にし、それを当たり前のこととして対処してきたルビーが、「自立」して自分の人生に踏み出すには、やはり家族の理解と自立が必要なのだ。

ルビーの兄、母、父がそのことに気付いて彼ら自身がルビーから自立することが、本当の家族になるということなのだろう。

ヤングケアラーという問題が顕在化している昨今だが、困難な状況にある人の社会的支援や相互理解の一助になればよいと感じる作品でもある。

(評価:★4)

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