[コメント] 刑務所の中(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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私の尊敬するジャネット・ウォイティッツという人は本の中で「子供にとって一番大切なことは、毎日同じスケジュールで生活することだ」と言っています。つまり、同じ時間におき、同じ時間に学校に行き、同じ時間に食べ、同じ時間に宿題をし、同じ時間にねる。このあたりまえすぎる生活が子供に安定感(安心感)を与えるということなんですね。人は自分が育てられたようにしか(自分の子供を)育てられないから、あたりまえの生活をしてこなかった人には、こんな基本的なことすらもむずかしいのだというのです。「自分の経験から”子供が退屈に感じるだろう”とあなたは思うかもしれない。でもそんな心配はご無用だ。子供は心地よいと感じこそすれ、退屈だなどとは決して思わないものだ。」と書いていました。そのときは全然ピンとこなかったのですが、この映画をみてその意味をやっと理解できました。この映画の登場人物たちの幸せそうな顔はどうしちゃったワケ?みんな5歳の男の子のようだ。食事のメニューにわくわくしたり、チョコレートのおやつをうらやましがる。そして、親に(看守に)しかられないように、顔色をうかがったりする。ちんこにティッシュがついていたといってはからかう。(そういういちいちの表情が実に子供みたい。山崎さんだけじゃなくみなさんすばらしかった。)ハナワさんたちも誰も退屈で死にそーだという感じじゃないし、どっちかっていうとここでの生活が快適そうだ。実は子供のころにさんざん体験しなくてはならなかったことを刑務所という場所でやっと体験しているわけだ。外でナニをしてこようと、いつもおいしい食事をだしてくれ、清潔なふとんや下着をだしてくれる。悪いことやルール違反をしても、そのときはしっかり叱られるけれども、そのことで食事をぬかれる等の罰をかされる心配がない。そうね、この「心配がない」という感覚が心地いいのだと思う。もしかして彼らのそれまでの人生はジェットコースターのように波乱万丈で、いつも同じ時間に食べるなどという基本的なことも知らなかったのかもしれない。ジェットコースターで食べるパンは、味なんかわかんないだろう。心配のない生活をしていて、そのなかで食べるパン+マーガリン+あんこだから、いままで食べたどのパンよりもおいしいんだ。正月もちゃんと正月料理なんてたべたことなかったんだろうな。ジェットコースターじゃね。伊達巻もふっとぶというものだ。なんてことないフツーのメニュー、フツーの白飯がこんなにもおいしく食べられる幸せ。もし、刑務所に入るずっと前にどこかでその幸せを知っていたら彼らの人生もかわっていただろうな。
シャバに出るときまでに思う存分ルーティン生活をエンジョイすれば、きっとシャバにでても大丈夫だろう。少年院と違って刑務所だから刑期がすめばだされてしまうけど、このルーティン生活にあまえたりない人は何度でも戻ってきてしまうんだろうと思う。(迷惑な話だけどね。)思う存分子供時代をエンジョイしないとオトナになれないのと同じように。私はいままでの親生活をものすごく反省しました。親として私してあげられることって、こういう安心感をいつもたたえた生活をさせてあげることだったのに・・・うちのコドモもすこしずつ私のひざからはなれ、シャバにでていくことだろう。でも、不安になったり失敗したりしたとき、彼女がいつ羽をやすめに帰ってきても同じ居心地を味わえるように、しっかり生活していかなくっちゃね。そのうちシャバでひとりで生きていけるようになるまで。それは一生のシゴトだ。
とはいえ!
この不景気、この映画をみて刑務所志願者が激増しやしないかとハラハラします。とりあえず、屋根のあるところで眠れるし、ご飯にありつけるし。そのくらい、シャバは不景気の嵐がふきまくってます。女子刑務所は、もっとドロドロしてそうだなあ。イジメとかありそうだし、牢名主さんとかいそうだし・・・あ~コワ!やっぱり男の人はいつまでも少年でいられるのかしら。
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