[コメント] 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
オープニングの給油機(♀:潤滑油。または♂:燃料を精子とした場合のみ)とB-52(♂:ぶち込む。または♀:給油ホースを入れられるとした場合のみ)の前戯なしの(既に洪水)挿入に始まり、異常者と正常者の紙一重を言葉責めで説明し、「ハラハラドキドキ」と「ワクワクドキドキ」を詰め込んだ感情操作てんこもりの内容…つまり激しいピストン運動と48手が終盤まで原子力発電級に迫りくる。
そしてゴム無しなので思わず(確信犯)中出ししてしまい、地球と言う名の卵子に一匹のおたまじゃくしがモーレツにグサッと一発入って受精卵誕生。そこから感動が産まれてキタキタキターーーー!世界一長い名前の名作誕生!!
(フー。優しい歌声をバックに、オルガスムスを持続しながらラストを見終えられるだんなんて…もう駄目。これ以上できない…ポッ)
…どうしても、何回考えても感想を表現するとこうなる。エロい訳ではなくて、保健体育(原っぱ)で性教育(濡れ濡れのショボショボのエロ本)を教わって(読んで)いたら誰だってこうなるはず。ただ、恥じらいが私に少し欠けていた書けたのかも。
世界情勢と保健体育を結びつけてしまったキューブリックの発想と独創性、絵作りは生き仏だったんだと今更痛感し、キューブリックの早い死を悔やむ。
[異常な博士のモデル]
日本国土を焦土化した張本人で、日本の航空自衛隊の建設に貢献したことで日本政府から勲一等旭日大勲章を贈られ、映画『13デイズ』でも出ていた、今は大金持ちの、あのカーティス・E・ルメイがモデルと言ってしまってもいいのではないだろうか。
彼の傍若無人さをキューブリックは映画『突撃』でも、スタイリッシュに批判したが、この作品はそれに輪をかけてカーティス・E・ルメイを論破しようとしているようだった。チェスの名人スタンリーキューブリックは、映画という一番威力がある武器で世界の眠れる市民を呼び起こそうとしたのだ。映画『市民ケーン』以上に骨太で反骨があり、映画『独裁者』と共に体制と真っ向から勝負した映画である。
Laugh&Sex!世界にガス抜きを。そして笑いガスを。そしてLove&Peace!
2003/1/22
[注:ここからは、以前書いてお蔵入りしたレビュー。文章的に幼いと思いお蔵入りしていたんですが晒してみました。無益かもしれませんので、読んでいてイライラしても一切の責任負いません。]
この映画には、この作品の前に撮られている作品からの流れが確かにあるのだ。
まずは『スパルタカス』(1960/米)なのだが、この作品は見事オスカー4部門を制覇している。助演男優賞、撮影賞(カラー)、美術監督・装置賞(カラー)、衣装デザイン賞(カラー)の4部門。主要部門は?スタンリーキューブリックは『スパルタカス』で名声を得たものの欲求不満が溜まって、「自分に決定権のない映画なんて撮らない!」となったのだ。何故ならキューブリックは脚本の決定権を持っておらず、思うように撮影できなかったから。(カークダグラスが製作だったのも大きいと言われている)
そして前作にあたる問題の『ロリータ』(1962/英)である。原作も紆余曲折ありながら大ヒット。で、この映画も紆余曲折がありながらヒットしたのだが、その紆余曲折がキューブリックの堪忍袋導火線に点火。あのエロオヤジのハンバードが妻と寝る時ベット脇に置いてあるロリータの写真を見て性的興奮を得ている場面が、健全でないとされ「罪になるから見るな」と全国の教会にお触れをだしたのだ。カトリック教会がだ。
キリスト教団体が絶大な力をもっていたアメリカにおいて『スパルタカス』は一部同性愛的だとし、カットされてしまった時代。だからキューブリックはアメリカでの検閲を逃れる為に、わざわざイギリスに移住し撮影し、渡米するのに客船を利用する(バレないように?)などして、綿密に検閲回避をしていたところにカトリック教会。フィニッシュしたかっただろうなぁ。エロティックシーンをことごとくカットされたんだから、そら『博士の異常な愛情〜』で爆発するって話よ。『スパルタカス』『ロリータ』で自分の欲求不満ダムが決壊したんだろうね。
……って、実は上記の2作品、自分の才能を引き出す為の噛ませ犬だったのかも?生活費を賭けチェスで稼いだ程のチェスの名人キューブリックの事だし、ひょっとしてひょっとするかも?
ふと、______________
ヤン・ハーラン監督のドキュメンタリー映画『Stanley Kubrick: A Life in Pictures』(2001/米)を見たのだけれど、この中で、『博士の異常な愛情〜』の事も語っていた。
そこで面白かったのが、ポール・ラシュマーさん(作家/ドキュメンタリー映画監督)が語る内容なのだ。彼はBBCに勤めてたらしいく、そこで彼と同僚達と共に(勿論仕事でだと思うが)『博士の異常な愛情〜』から30年後経った1994年から2年間かけて’50年代’60年代に戦略空軍で何が起きていたのか調べたらしい。
すると『博士の異常な愛情〜』で出てきたアノ妄想に狂ったリッパー将軍にも負けない人物がいたことを突き止める。その人物というのはカーティス・ルメイ将軍(1948〜1957/戦略空軍司令官)。彼はソ連を挑発する為ために実際に爆撃機をソ連に向けて飛ばしたのだ。そして調査していた彼らは、トミーパワー将軍(1957〜1967/戦略空軍司令官)の当時側近だった人から話を詳細に聞いたところ、カーティス・ルメイ将軍というのは精神障害者だったと知る。30年前に映画が描いてた通りの事が実は起きていたのだ。
残念ながら、カーティス・ルメイ将軍がそれを起こした年数が語られていないのだ。1964年前だとしたらキューブリックは情報をつかんで映画化にしたのだと考えられたのに…。
で、私は邪(幼)推っぽく「カーティス・E・ルメイがモデルだ」で三文推理してみた。ポール・ラシュマーさん以外にも『博士の異常な愛情〜』についてのエピソードを語っている人がいる。ケン・アダムさん(プロダクション・デザイナー)は、『博士の異常な愛情〜』撮影中の秘話を語った。
何でも、撮影中誰かがアメリカ軍関係者を『博士の異常な愛情〜』の撮影所に連れてきたらしいのだが、その軍関係者、飛行機(B-52)の内部の正確さに凄く驚いたそうだ。その驚きには恐怖が混じっていたらしく、キューブリックにメモを渡したそうだ。『資料の出所を明確にしておいてくれ。さもないとFBIに調査させるかも。』
「おおぉ!」ってなったが、これまた残念だが話はその後を語らず先へと進んでしまった。ま、その後は、何となく資料の出所を出しておいたのだろうが、私はこのエピソードを聞いて、恐らく【カーティス・ルメイ将軍事件】を知っている軍関係者がネタをキューブリックに提供したのだと思った。(実に勝手だが)
『L.A.コンフィデンシャル』内で見られるように、本職の刑事が刑事ドラマのアドバイザーになるのは至極当然の事。そしてこの映画にも軍事関係者のアドバイザーがいたのだろう。でだ、ネタを提供した人というのは多分このアドバイザーだろう。順序としては提供→アドバイザーだと見て間違いない。
ここまで言っておいて何だが筋が通っていそうでそうでない。締まりが悪いが三文推理は三文推理。キューブリックの心の中の真相は迷宮だ…。
__《キューブリックの撮影と情報管理》__
『Stanley Kubrick: A Life in Pictures』には(『博士の異常な愛情〜』とは関係ないところで)キューブリックの撮影方法が語られているのだけれど、彼の撮影現場には人が少なかったらしい。それは余計なコストをかけない精神が生涯宿っていたのだ(→この世界入ってまだしの頃、父親に生命保険を解約してもらって制作費を得ていたので、そこで鍛えられたのだろう)。
が、私はそこに突破口を見た。無駄な撮影スタッフを排除した理由は。コスト管理と情報管理をするためでもあったのだろう。情報が筒抜けになっては困るし、カーティス・E・ルメイ軍団に命を奪われたらしゃれにならない。これは何重ものファイアーウォールを構築していた証明だと思う。
(題名に負けじと粘った)長々しき文、ここで終了。読んでしまった方、乙。
2002/10/3
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