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[コメント] ニースについて(1929/仏)

ファーストカットは花火だろうか。続く無機質で人工的な市街地の鳥瞰ショットの“平板”さが美しく、印象的だ。そして、一気にニースという町の営みが“断片”に分断され撹拌され再構成され提示される。なんとエキサイティングな無機と有機のコラージュだろう。
ぽんしゅう

同じ服装で群れ、同じように歩き周り、同じポーズで休息する観光客たちの画一性。彼らを迎えるために美しく整えられた建造物はあえて傾いた画角でとらえられ、お決まりの陽光きらめく波間を疾走する水上飛行機やヨットは「パンフレット」どおりの“夢”を実現してみせる。

一方、裏町のアパートメントの洗濯物や下水のゴミ溜りといった生活の暗部には、あたかも身を隠してしまったかのように生活者の姿はない。カーニバルのパレードの張りぼて人形は“ハレ”を戯画化し、思考を停止し腰を振り続け踊り狂う(あのときのジュリアナ東京と同じだ!)娘たちに「FIN」のサインは出ないのだろう。etc・・

そして、工場だろうか、焼却炉だろうか、巨大な煙突状の造形部をとらえて、このニースという町の再構築は幕を閉じる。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ[*] [*] 寒山拾得

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