[コメント] エレファント(2003/米)
「傍観者」ですらない。「映画」でもない。
教育現場での無差別殺人事件を耳にしてもそれほど驚かなくなった昨今、「報道ステーション」や「バンキシャ!」あたりなら、映画以上の<エンターテイメント>として事件をセンセーショナルに映し出すだろう。
鑑賞後、何かかこう、納得できないような、腑に落ちないような、これを「映画」とは認めたくないような気持ちになった。(その気持ちは、「報道ステーション」や「バンキシャ」を「報道」「ジャーナリズム」とは認めたくないような感覚に近い。)こうした事件を「映画」として取り上げることに異論を挟むつもりはないが、その迫り方がどうしても心情的に許せないのかもしれない(教育現場に携わる者として)。
この映画では、凄惨な事件をドラマティックに迫るわけでもなく、ドキュメンタリー風に写実的に追うわけでもない。ただただ、美しい風景を切りとった写真集を捲るかのようだ。そして、その美しい写真には、心がない。血が通っていない。
こうした事件が映像や活字で取り上げられれば、わたしたちはその事件の「傍観者」。事件の背景を情報として得るにつれ、その量と正比例して感情移入すれば、あたかも「目撃者」や「被害者(としての可能性を持つ者)」。そうした一切の感情を排するための手法なのかもしれない。
ただ、こうした手法が斬新であるにせよ、それが監督の思惑であるにせよ、わたしには嫌悪感しか残らなかった。「美しい」ことへの嫌悪感、とでも言おうか。
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