コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 東京原発(2002/日)

この映画は隠されている或いは表沙汰にされていない情報を晒してみせることを最終目的にしているのだが、
kiona

同様の映画の多くが社会に一石を投じるには及ばず忘れられていく。消えずに残っていく類があるとすれば、それは社会派を気取りながらも、一方でエンターテイメントとして確立されている作品だろう。娯楽性に富んだ作品は往々にして物語の中に明確な対立構図を持っている。その一端に被告側を置けばいいのだから、エンターテイメントは基本的に告発とベクトルを共にしうるのだ。この作品は一見卒なく巧みにやっているように見えるが、足りなかったのは、むしろ敵役のシルエットを明確にする基本的な娯楽精神と度胸ではなかったか?どっかの子供をテロリストにしたてている場合ではない。いや、テロリストそのものが対立構図の一端になりえない。悪と知りながら原発が必要だと国民を脅しつける誰かを主要人物として登場させて始めて、印象は霞まずに済んだはずなのだ。もっとも、たとえそうしたとしても、告発という目的を達成することは至難だ。そもそもこういった社会問題は正しい情報が明らかにされていない現状が問題なのではなく、間違っていることが明らかであるにもかかわらず、それが浸透しない、浸透したとしても腐敗の構造を正そうという方向には動けない、社会、いや我々の体質の方に問題があるのだから。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)3819695[*] 林田乃丞[*] 死ぬまでシネマ[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。