西部劇については自分は語る資格がない。なにせ『荒野の七人』くらいしかモトネタが判らなかったくらいだから。でも、生半可な知識がなくとも楽しめる出来映え。知ってる人はビデオ屋のオジサンよろしく含み笑いしながら楽しむのもよかろうが。

「椿ちゃん」はこれまでのクレしんヒロインでは異色だった。これはグラマラスな美女が好きなしんちゃんに水島監督が叩きつけた挑戦状か？オトナ観客にとっては、マセガキしんちゃんにセクハラギャグをぶつけられて、笑って「悪い子ね、メッ！」と叱ってくれない純情少女で物足りないかもしれない。しかし彼女の存在は、しんちゃんを判りやすい恋にみちびく格好の相手であることは間違いないだろう（ギャグ映画にそんなものが必要か、は別として）。

カスカベ座を見たときには、これは「幽霊映画館」かと思ってしまった。町外れに残ったもう潰れてしまった名画座。しかし昔はつめかけてくれたお客がもう一度つめかけてくれないか、と蟻地獄のように客を待ち受けている映画館か…と。でもそれでは『オトナ帝国の逆襲』の貧弱な二番煎じになってしまう。やはりこの映画のエンディングで良かったのだろう。（全国をシネコンが支配し、名画座が淘汰されてゆく現状を考えると前述のオチもありかとは思うが）

こう並べてみて判ることは、水島監督は今回「児童映画」ということを以前にもまして意識していたのでは、ということだ。それも上品な。…それがいい結果を生むのかどうかは、まだよく判らない。ただ今回に関して言えば、クレしんの「ドラえもん化」が心配になったのは確かだ。ちょっとばかり破天荒なオモシロさに欠けていたと思わざるを得ない。作品としての「いい話」に落ち込んでしまわないか…そんなふうに、少々不安になったのだ。