[コメント] 三人の名付親(1948/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
魅惑的なタイトルバックを経て、のちに保安官とわかるSWEET家での語らいのひとときを振り返ってみると、そこにはざっと考えてみただけでもかなりの伏線が張られていることがわかる。
◆まず写しだされる「B.SWEET」の表札から、本作が名前の映画であることがわかる。
◆のちに保安官とわかるバック氏の名前がスウィート(やさしい)であることや、そのバック・スウィート氏をパーリーと呼ぶ奥さんのキャラクターから、本作がどのような経緯を辿ろうとも、決してアンハッピーな映画では終わらないことがこの時点ですでに示されている。
◆保安官にすすめられコーヒーを飲む3人組。この時点ではおかわりを断るが、その後はコーヒーどころか一滴の水にさえ苦労することになる皮肉。
◆3人組は、雨具を持っていることからテキサスから来たことを知られるが、その段階でこの辺りは雨が降らない所(水に苦労する所)であることを知らされている。
◆この時点で保安官に、水袋がパンパンであること(すぐに砂漠へ移動することを勘ぐられているわけである)を確認されている。そしてその水袋は、のちに保安官に撃ち抜かれることとなる。
◆姪夫婦のことが語られるが、同時に本作にとっては大切な場所であるニュー・エルサレムという地名や、姪の夫が困ったことをするバカ亭主であること(彼はのちに井戸を枯らしてしまい、自分と妻の命を落とす、そして3人組が名付親となる原因を作る)が示される。
◆このときの妻との些細な話から、3人組の1人がアビリーン・キッドという名であることがわかり、怪しい奴らだと勘ぐった保安官に身元を知られることとなる。
◆この時点での保安官の最後の挨拶は「多分また会えるさ」である。
このように、軽く思い出しただけでもこれだけのことが思い浮かぶのだが、その後も保安官の「なかなか頭のいいやつだ。今度はチェスをしてみたい」などという何気ない台詞のとおり最後チェスをしていたり等、細部にまで楽しさが隠れているところが本当に面白い。また、素晴らしいロケーションの撮影も、このロード・ムービーに、鮮やかな華を添えている。
鮮やかといえば銀行を襲う際の凄まじいアクションシーンや、ハリー・ケリーJr. の歌、荒っぽいイメージで押しながらも子どもをあやすシーンなどにコミカルな面をみせるジョン・ウェインの演技も、決して無理がないのに映画にはまり込んでいるところは実に鮮やか。また、銀行頭取の娘が駅馬車で現れる際にジョン・フォード監督自身の大傑作である『駅馬車』のテーマ音楽がさり気なく流れる粋。
こういう作品を見ると、大人の演出だなぁと素直に感動してしまう。現代では決して見ることのできない類いの素晴らしい映画だと思う。
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