[コメント] 牛泥棒(1943/米)
本作の素晴らしさを語るには、まずそのラストシーンから入っていかねばなるまい。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作のラストシーンは、ファーストシーンの忠実な巻き戻しであるのだが、そこでもまた犬が登場し、最初に登場した場所へきちんと帰っていく。少なくとも私は、そこに大きな感動を覚えた。というのも、冒頭にオッと思ったあの何気ない、けれど無くてはならない犬のあしらいが、実は明確な演出によるものだということをそこで確認したからである。そう本作は、それほど厳格な演出の映画なのであり、80分に満たない上映時間も、枝葉を切り落としたがゆえの結果なのであろう。
その意味では、犯人探しの山中でヘンリー・フォンダが探していた女に出会うというシチュエーションも、最初はそんな尻軽女のために苛立ち喧嘩までしていた彼が、最後は人間として成長していく姿を示し町を去っていくという、ラストへの重要な伏線となっているし、騒動の発端となった、殺された(と思われていた)牧場主や、盗まれた(と思われていた)牛が結局一度も画面に登場しないという徹底ぶりも素晴らしい。
この作品をかのクリント・イーストウッドが愛し、自らの演出の参考としているという事実も大いに納得させられる。その意味でも本作は、現代にも生きる傑作である。
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