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[コメント] ヴィレッジ(2004/米)

ロマンスはかなり良かったと思う。やっぱり、シャマラン監督の名が観るものにとってマイナスに働いているような気がする。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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シャマラン監督作品となると、どうしてもラストの「落ち」を意識してしまう。大どんでん返しとかね。大概に慣れてきた映画ファンにとって、今度はどれだけやってくれるだろう!と、怖いもの観たさで観ている「潜在的な」シャマラン監督ファンもいるだろう。 私もその一人なのだが、本作を鑑賞するにあたっては、なるべくシャマラン監督の名を忘れ、「落ち」に縛られないように心掛けた。

そんな私にとって、中盤までのルシアス(フォアキン・フェニックス)とアイヴィー(ブライス・ダラス・ハワードロン・ハワード監督の実の娘)のロマンスは、ここ最近のラブロマンスの映画でもかなり感情移入できるほどの優れものだったと思う。特にアイヴィーの姉キティ(ジュディ・グリアー)の告白を断った後のルシアスの秘めたる想いとアイヴィーの積極性。

アイヴィーを守る為、夜半、彼女の家のバルコニーに座るルシアス。そんなルシアスに言葉で詰め寄るアイヴィー。それを「何でも先に口にしないでくれ」と答えるルシアス。恐怖に震えながら扉から手を差し伸べるアイヴィー。ぎりぎりの処でアイヴィーを抱きかかえるルシアス。 どこかアジア的なものも感じられ、素晴らしかった。

しかし、映画としてはこの辺りをピークとして「秘密」というキーワードが目に付きだす。ルシアスが言うように村は秘密だらけだった。そして、ルシアスとアイヴィーの婚約が周知の事実となった(「秘密」でなくなった)段階で2人のロマンスは映画的に話の筋から外れてしまう。以降は完全なるサスペンス映画となる。ロマンスに浸っていた鑑賞者もその秘密の解明に迫られる(付き合わされる)。

ここに至って、否応が無しにも、村が「シャマラン監督の作為の世界」であることを思い出してしまう。「どうせ・・・ 落ち」の世界である。しかもアイヴィーが父と一緒に小屋に入った段階でその「落ち」が案の定だと判ってしまう。以降の盛り上がりが失速するのはしょうがない。

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多分、監督のメッセージはこんなところだと思う。

世間から逃れた犯罪被害者による共同社会。被害者だけで理想的な共同社会を築いたつもりでも、秘密によりコントロールされた社会はユートピアには成りえない。秘密は更なる秘密を生む。秘密は一方では愛を育み(はぐくみ)、一方では犯罪を育てる。それは人間社会に他ならず、(ラストで年長者会が選択したように)人はそれを続けるしかない。

この流れからすると、ノア(エイドリアン・ブロディ)がロマンスからサスペンスに至る本作の一番のキーマンだと思うのだけど、ちょっとポジションが不明確でしたね。ラストで、化け物の格好をしたノアのアイヴィーを追う感情に、偏執的な愛がこじれた末のストーカー殺人に見られるような殺意があったかよく判らないし、それまでノアが家畜を無残に殺したり、化け物に化けたりしていたのも悪戯だったのかよく判らない。それとも、この曖昧さが犯罪の本質ということなのでしょうか?

(評価:★3)

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