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[コメント] スウィングガールズ(2004/日)

ちょ、これなんてエロゲ?
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 素性がアレなのがバレてしまうのでアレなんですが、この映画の構造は驚くほどエロゲです。いや、近年のエロゲがエロだけに飽き足らずこうした「泣かせ」や「青春」の手法を踏襲しているわけで、あまたのエロゲ作家のお手本になるべき作品なのかもしれません。

 これをエロゲとして捉えたとき、プレイヤーとなるのはもちろんナカムラくんです。否応なく制服の女のコの群れの最下層に放り込まれてしまう導入部分なんてエロゲそのもの。攻略対象も群れのリーダー格であるツンデレちゃんを筆頭に、ドジピュアな眼鏡っ子、少し気が多いルーズソックス、女教師(=この存在は前置き不要)ときっちり属性が揃っているし、あちこちにフラグも用意されています。

 たとえば眼鏡っ子が横断歩道のメロディにジャズを見出すシーン。実際にはメンバー全員が揃ってしまっていましたが、何らかの原因であの瞬間を眼鏡っ子とふたりきりで共有していたら、彼らの距離は一気に近づいていたはずです。屋上で撮影したあとの雪合戦でナカムラくんがツンデレを木の下に追い詰めたシーンなんて、私には

▼雪ダマをぶつける

▼手を差し伸べる

 という選択肢まで見えてしまいました。見えてしまったんだからしょうがない。アキハバラの街を歩くとわかるんですが、メイド全盛と思われている今でもエロゲの基本はやっぱり学園モノなのですよ。しかもパチンコ屋やスーパーの余興に呼ばれた彼らはご丁寧に「SWING GIRLS and A BOY」というバンド名までつけている。「A BOY」ですもん。

 ただし、この物語がエロゲとして成立しない決定的な理由がひとつだけあるんです。

 この物語は、弁当が腐るような灼熱の夏に始まり、困難を乗り越える秋を通り過ぎ、粉雪舞う中でクライマックスへと走り出し、雪深い真冬に終幕する。春が来ないんですね。このまま春が来ていたら、そりゃもう完全にエロゲでした。だって春を迎えた彼らには恋愛くらいしかすることが残ってないんだから。まぁエロゲとして成立させる必要は全然ないんですけど。

 で、私がこの映画に5点をつける理由はまったくそんなことではなくて、最後の発表会のシーンの 貫地谷しほり です。ネズミのぬいぐるみをつけたトランペットのコ。あのコがなかなか出せなかった高音にさしかかるパートで見せた、不安と緊張に溢れた表情。まゆをひそめて二重アゴのブサイクな顔になっても、なりふり構わず演奏を成功させたいんだというあの表情にこそ、この映画の「本気」を見たわけです。以上、レビューおわり。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ジェリー[*] 4分33秒[*] IN4MATION[*] ina Yasu[*] ねこすけ[*] ぱーこ

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