[コメント] エターナル・サンシャイン(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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勿論、医学的な記憶喪失とは別として。
ジョエルは記憶消去と共に、自身の記憶を辿る旅のような体験をしていく。クレメンタインとのすれ違いから始まり、出会いの場面まで。ジョエルにとって断片的な記憶の数々を繋ぎ合わせるものがクレメンタインであるわけだ。
記憶の場面に限って言えば、この逆回転で描かれていく展開が本当に痛烈に語りかけてくる。自分がいちばん感じたのは「その人のスタンスによって記憶はどうにでも変化する。でも基本的に記憶は消去できない」ということ。ジョエルが記憶の狭間で苦悩するれするほど、「記憶は消せない!」というリアルな訴えが聞こえてくるかのようだった。一見ファンタジックな作風だが、実は怖いくらいリアリティーを追求しているのだ。
まぁそんなリアルなところが怖いとは言っても、この作品は「記憶(思い出)は掛け替えの無いものだし、幸せなもの」だと言っている。そういうオブラートがこの映画にはあるから、鑑賞後は何か気持ちが良いんだろうね。
ジョエルにとってクレメンタインの存在。クレメンタインにとってジョエルの存在。そんな答えさえ提示されていないところが映画としての醍醐味の一つ。繰り返し鑑賞したくなるし、そのことについて考えに耽ってみるのも良い。。
と、まぁそんなウダウダと語れる作品でもあるけど、全体的には衣装が素敵だったりジョン・ブライオンのスコアも最高のスパイスになっていたりと…素朴に「良い映画だ!」と思える材料が揃いに揃っている。何よりも今や天才と称されるカウフマン独特のニオイが漂う脚本も、それを見事に映像化してみせたゴンドリーの手腕も、更には落ち着きを貫く(やっぱり天才の)ジム・キャリーや髪の色が時間軸を示すヒントとなっているケイト・ウィンスレットも!いやはやみんな、ほんと素晴らしいよ。CGを(極力)使用していなかったという技法にもパンフを呼んで仰天してしまったし…(記憶の一つ、台所のシーンは圧巻!!!)
熱くなりましたが、それでも★が4つに留まっているのはちょっとしたことから。キルスティン・ダンストとトム・ウィルキンソンの不倫話は「現在」で語られている為か、映画的な感動に一歩足りないということ。ジョエルとクレメンタインとは違う記憶のエピソードだとしても少しパンチ力に欠けてしまう(尺も長い)。この二人を始め、記憶に携わる職に就く脇役達の掘り下げが甘いという点が少し引っかかってしまっての★4つ。イライジャ・ウッドなんて消去前の思い出を利用してクレメンタインに迫ってるしなあ…彼の真意が違う視点から記憶を語っていくこともできるかと。
結局ウダウダと書いてしまいましたが、本当に興味深い作品。
ゴンドリーのDVDに収められている、この作品の番外編とも言うべき短編の『Pecan Pie』は絶対観たいぞ!
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