[コメント] いま、会いにゆきます(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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口コミで広がったベストセラーの映画化作品。原作は未読の上、主演が竹内結子。なんだよ。『黄泉がえり』か?あれははまれなかったからなあ。嫌な予感を感じつつ、劇場へ。
しかし、これは全く違った。私的に大当たり。なるほど。こりゃ全然違うわ。だってオカルトでもホラーでもないんだもん。これはむしろSFあるいはファンタジーと言って良い。主題が全然違っているんだ。
本作の味は、『黄泉がえり』と異なり、決してこれが社会現象のようになっていないこと。その分、主人公達の心の交流がメインとなっており、閉じられた輪の中で、ほとんど3人だけの物語となっている。その分、心理的な掘り下げがしっかり演出されていたし、しかも後半の展開は意外で、すっかりはまりこんで観てしまった。
正直、最初の印象は「安上がりな作品だな」だった。だって登場するのは最小限度の人数だけ。ロケ地も基本的に田舎だけ。SFXだってほとんど使われていない。あくまで閉じられた輪の中のヒューマン・ドラマだった。
ところが本作は本当に感心するところが多い。
先ずオープニングから数々の伏線が登場していたこと。しかもこれが伏線だとはっきり分かるように演出がされていた。例えば絵本の中で、アーカイブ星に戻ろうとしている女性が入ろうとしている扉に書かれていた#5のマーク。その次、不自然ではないように瞬間的に澪が現れた廃墟の扉が映し出されたり、オープニングでケーキ屋が「これで最後」と言っているようなこと。これらはその時点では意味がまるで分からないのだが、全てちゃんと印象づけられるように演出されているため、後になってちゃんと分かるようになっている。これらすべての伏線が収斂していく設定の妙!見事の一言に尽きる。下手に話を多くすることが無かったため、それら一つ一つが印象深く頭に残っている。後になってこれらが伏線だったことがよく分かるんだよな。この演出の巧さは一種の感動もので、物語の途中で出てきたちくちくと小骨が喉に刺さったような気分が解消されていく気持ちの良さ。このケレン味のおもしろさ。
それと、本作の構成は一旦物語を完結させて、そこからリセットして過去の物語を再構築しているところも大変面白い。これが前述の設定ばらしとなっているのだが、これが本作のユニークなところで、伏線を収束させる方法がとても巧みなため、ここで二度目に改めて感動できる。そして最後にこれまで全てを出すことがなかった絵本が全部登場することで、ラストシーンで又感動できる。この辺が大変見事な構成だ。
それとキャラが良いよ。中村獅童を持ってきたのは一種の冒険だと思うのだが、下手なイケメンじゃなく、こんなごついキャラに純愛をやらせようなんて普通考えもつかない。不器用で、依存心が高く、それでも我が子祐司のために生きていこうとする姿が大変良かったし、そして巧が澪と出会ってしまって、彼女との関係で本来それは「あなたが欲しい」であるはずなのに、それを抑えて、祐司のためにも「あなたにいて欲しい」と主張する。その抑制具合が巧いため、夫婦のくせに改めて澪と結ばれた時がとても新鮮な感じを演出されていた。なんかいつもびっくりしたような表情してる竹内結子も、場面場面で新鮮な雰囲気を出してくれていた。
それに何より、家族を作る物語って、実は私にとっては無茶苦茶ツボなんだよな。
結局、一言で言ってしまえば、無茶苦茶好み。
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