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[コメント] ハウルの動く城(2004/日)

“動く”城の描写からハウルを考える。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







城とは本来動かないものである。ところが本作は動くことを前提としている。城が動くことの意味。城好きの私として、鑑賞前の注目点はここだった。

この点、本作は冒頭の少女達の会話、「ハウルの城 あんなに近くに来てるわよー」により、驚くべきほどの速さで、さもそれが当然かのように作中に取り込んでいる。城が動くという奇抜な設定に、ほとんどの人に違和感を感じさせない演出は見事と言うほか無い。

では、「動く城」が少女達の興味を引くのは何故だろうか? この疑問を解明することが「城が動く理由」を解明する近道となるであろう。 少女達は「ハウルは心臓を食べる」と言っていたが、この恐怖が人の興味を引き起こしていたのであろうか? 私は違うと思う。

ラストを除いて、ハウルの描写には「弱虫」で「引き篭りがち」で時として「凶暴」な、現実の世界にも多く存在する「孤独」な少年を感じる。人が興味を持ったというよりむしろ、ハウルがそう願ったのではないだろうか? そう、

<<誰か自分に気がついてほしい>>

そんなハウルの心情が、カルシファーと一体となり「動く城」となって現れたように感じる。 ハウルの城が、城本来の目的であるはずの戦争目的ではなく、ただ独創的で目立つデザイン(城というよりは子供が作る基地ですね)だったのもその現われだろう。

カルシファーを捕らえて離さない本当の理由は、「ハウルの心臓」だけでなく「ハウルの孤独」までも受け持ってしまったことだと思う。カルシファーが城に通したのは、ハウルの孤独を癒す存在だけであった。また、少女達が恐れた「心臓を食べる」ハウルが、実は「心(ハート)を求める」ハウルであったことも想像に難くない。

ラスト。城に初めて“バルコニー”が出来た。ソフィーと仲間達に囲まれ孤独感から解き放たれたハウルはもう部屋に引き篭らない。「ハウルの動く城」は、街を離れ、野を行く。

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余談ながら、原題 "Howl's moving castle(ハウルの動く城)" は、"How's (the) moving castle?(ハウルの動く城はどうしてる?)" と、ハウルが望んだであろう人々の会話と掛けていると感じるのは深読みであろうか。

(評価:★4)

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