これは映画ならではのとことん贅沢で見応えのある空間やスリルと興奮に満ちた緊迫の時間、そして心の動きがひしひしと伝わってくるジャッキーの卓越した演技力を堪能できるだけではなく、怒りや悲しみや憎しみや絶望やそれを乗り越えたところにある慈しみや情や許容や希望というものについてしみじみ考えさせられる、実に素晴らしい作品だと思います。

右を向いても左を向いてもヤなことばかりな、不信感や諦念にまみれた自己へさえ不正直なへつらいや重いため息にすっかりなじみきってしまった言いたいことも言えないこんな世の中で、それでも前向きな気持ちにさせられてしまう魔法のような作品だと思います。

「たとえ不公平な世の中だとしても、それでも希望は捨ててはいけない」

ジャッキーの（決して上辺だけではない）真にあたたかなまなざしがきっちり作品に反映されているからこそ、この実に単純な、それでいて何よりも力強く美しいメッセージに素直に励まされることができるのです。

すくなくとも私はそうでした。すっかりオトナになって、すっかりどこもかしこも汚れきってから初めてジャッキー映画を知った私にさえ、彼は躊躇なく両手を差しのべてくれたのです。そして「とても大切なこと」を平易に、かつ真摯に伝えようとしてくれたのです。

だからたくさんありがとう、ジャッキー。他の言葉が見つからなくて申し訳ないのだけど、とにかくたくさんありがとう。