[コメント] ミリオンダラー・ベイビー(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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苦しみや悩みばかりの世の中だが、それでも生きてこそ人生だと考える僕には、正直言うと尊厳死という概念には若干疑問を感じてしまう。しかし、それでもこの映画にはねじ伏せられた。それだけ尊厳死について多面的に深く描き、人間存在そのものについて追求していたと思う。
家族に対する疎外感を持つクリント・イーストウッドとヒラリー・スワンク、ボクシングで片目を失ったモーガン・フリーマン。3人の主要人物はすべて痛みを伴う過去を持っている。それが人間関係に絡み合うことで、どこを見ても厚みのある描写がされていた。そういったことを、淡々とした無駄のないリズムで描くイーストウッドの演出力、渋さとともに内面を表現するイーストウッドの演技力、どちらにも感服である。
全身麻痺になったスワンクにイーストウッドは学校で勉強するという新しい人生を薦める。それと同時に、ひとりになったときには教会で悲嘆に暮れる。最終的な決断も悩んで、悩んで、悩み通した上で決めたことである。その姿が伝わってくるからこそ、僕の考え方とは違った行いへ進んだとは言え、深く思慮してしまうのだ。
ラストシーンでイーストウッドはガラス越しにひとりレモンパイを食べている。あとを追って命を絶つのか、ひっそりと新しい生活を歩むのか。ふたつの選択肢が用意されて映画は幕を閉じる。僕は生きて欲しいと願いつつも、死んでもいいくらいおいしいレモンパイを食べてから自殺を図るのだと思う。しかし、なぜだろう。どちらの方向に行ったとしても、そこには異様な悲哀が残る……。
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