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[コメント] チャーリーとチョコレート工場(2005/米=英)

「今更この映画をリメイクする必要性が見当たらない。単なる金儲けに過ぎないのではないか」と批判をした前作のウィリー・ウォンカ、ジーン・ワイルダーには是非この作品を見てほしい。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私にとって『夢のチョコレート工場』は大好きな映画のうちの一本です。あの毒々しさ、ナンセンスさ、そして馬鹿げた子供に馬鹿げた大人。そしてピュアな少年。初めて鑑賞した日は続けて2度観たくらいです。その大好きな映画をバートン×デップでリメイクが決定した時、私はなんとも言えない興奮状態に陥り、あの世界観をバートンがどのように再現するんだろうとずっとワクワクしていました。そして劇場予告を見た時、あまりのチープさ(悪い意味で)に逆衝撃を受けてしまいました。雑誌か何かで前作のウォンカ役、ジーン・ワイルダーの批判を読んだ時、私も激しく同意し、そしてティム・バートンにちょっぴり失望したのです。

実際に本編を観て、オープニングのCGにまず失望。やはりCGでは前作『夢のチョコレート工場』のあの香り立つようなオープニングには遠く及ばず、なんだかなー的なかったるさに襲われていた私に、追い討ちをかけるような工場の外観。暗く無機質なチョコレート工場に何の魅力も感じる事は出来ませんでした。極めつけにジョニー・デップの気持ち悪さ。何故にそんなわざとらしい歯を付けているのか!薄気味悪いというよりも馬鹿にされているような感じ。明らかにジーン・ワイルダーのウォンカさんの方が魅力的。

チャーリーの傾いた小さな家や、悪意に満ちた工場見学のオープニングに心を奪われたのは確かですが、それを差し引いてもまだ相当引き気味で観ていた私ですら、スクリーンから溢れ出るティム・バートンの原作と前作への敬意、そして愛情を感じ取るまでにそんなに時間は必要ありませんでした。確かに前作に比べるとCGの影響からか、生々しさは姿を消したし、前作の特徴でもある原色の氾濫も勢いがない。子供たちのクソガキっぷりも弱い。ウンパ・ルンパの歌も原作に忠実ではあるものの、なんだか取って付けたような違和感が残る。そうなんだけれども、ティム・バートンの嬉々とした表情が容易に想像出来る。作り手側の映画に対する愛情が伝わってくる。特に中盤から終盤にかけてはそれが顕著でした。実は前作よりもより一層原作に忠実であるし、それにプラスしてティム・バートンの人柄が表れたオリジナルエピソードの追加。ジョニー・デップの訳が分からなかった付けッ歯の真意が心に沁みる。そしてふざけた家族を尻目に、今では珍しくなってしまった大家族のそれぞれへの思いやり。チャーリーがジョーじいさんの手を引く姿には、なんでもないシーンなのに涙が出たりしました。核家族の増える昨今、このチャーリー一家から学ぶ事は沢山あるように思います。一つのベッドに4人の老人がきちんと納まり、その真ん中でチャーリーがちょこんと座ってチョコレートを家族で分け合う。 じいさんが震える指で財布の中からコインを取り出しチャーリーに夢を与える。貧しくても決して荒む事のない夫婦の愛。あの傾いた家の中には、家が傾くほどの甘い愛が溢れている。そしてウィリー・ウォンカの家にも実は愛が存在していたり。このスウィートで優しい家族愛が前作にプラスされた事によって毒気は薄らいだものの、より一層スウィートな映画に仕上がった。そこに『2001年宇宙の旅』のパロディや、『エクソシスト』並に気持ち悪いヴァイオレットのブリッジなんかが加わり、極めつけにナレーションは「お前やったんかい!!!」と本気で声を出してつっこんでしまった程の些細な笑いを塗し、それはそれは極上のお菓子に仕上がっていました。これに前作の私が大好きな台詞が加わっていればもうゴディバ並の高級チョコレート映画だったんだけどなぁ。それはさすがに贅沢すぎかな。

今作はジーン・ワイルダーもきっと納得の出来なんじゃないでしょうか。あなたと、そして前作への敬意はビシビシと伝わってきましたよ。

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05.09.13 記

(評価:★5)

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