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[コメント] メゾン・ド・ヒミコ(2005/日)

男だろうが女だろうがゲイだろうが、そんな区別なんて関係はない。みんなに共通すること、それは“人間”であること。この映画はホモセクシャルについての話ではない。これは“人間”についての暖かい物語だ。(2006.01.21.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 僕は勘違いをしていた。あらすじを聞いて、ジェンダーやセクシャリティに関する訴えがメッセージとして込められている映画だろうな、と思っていた。ゲイの友人もいるし、ひさびさに社会におけるゲイの存在についてでも考えようかなと期待していた。だが、そんな考えは勘違いだった。エンドクレジットが終わったところで気がついた。これは“人間”の映画だ、と。

 「私はいつも孤独だった」と話していた沙織が、「私はひとりではないんだ」と気がつく話。ホモセクシャルであろうがなかろうが、人間なら誰だって孤独を感じることがある。その孤独を埋めてくれる人たちに、男も女もゲイも関係ない。自分を受け入れてくれるコミュニティ、そこに暖かさがある。

 沙織は終盤でゲイのエゴに嫌気を覚え、半ば自棄になって細川に体を許すが、結局彼女の心は満たされない。だが逆に、最終的にホームに戻った沙織の心はすごく満たされている。肉体関係は持つことのできない人々の中にいながら、彼女は満たされている。体の関係が満たされるよりも、心の関係が満たされた方が絶対に幸せだ。心を満たすのに性別も何も関係ない。自らにとって適した“人間”であるかだけだ。壁に書かれた落書き「サオリに会いたい ピキピキピッキー★」は性差など関係ない“人間”から“人間”への素直な思いを綴ったメッセージだ。

 ゲイの登場人物を多く登場させながら、あくまで沙織という主人公の物語であることから脱線せず、安易な同性愛の権利主張映画にならなかったのが良かった。“人間”の物語として素直に感動した。

 同じスタッフによる前作『ジョゼと虎と魚たち』にあった美しい雰囲気を踏襲していたのも良い。柴咲コウの演技もすごく良い。そして、「ピキピキピッキー」や尾崎紀世彦の「また逢う日まで」といったお遊び的要素まで映画にフィットさせてしまう感覚、これもすごく良い。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)林田乃丞[*] ホッチkiss[*] IN4MATION[*] jean

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