[コメント] ランド・オブ・プレンティ(2004/米=独)
「豊穣なる土地」は何処に?
アメリカ人でありながらアフリカとイスラエルのアイデンティティも持ち、そこでのジレンマから「故郷」を夢見てきた少女(二十歳だが彼女は無垢の象徴である)。主人公のラナ(ミシェル=ウィリアムズ)の人物造型は興味深い。ヴェンダースが彼女の無垢をイコール希望=救済と見ているのか解らないが、ぼくには彼女の無垢な(innocent)信仰心と友愛が、どうも盲目的で無邪気すぎる(innocent)気がした。
対するポール(ジョン=ディール)は、枯葉剤の後遺症から逃れるために半ば無理にでも自分を偏狭な使命に追い込まずにはいられない。しかし彼は単純なイカレ野郎ではなく、何処か自分の愚かさにも気付いている(気付くだけの理性を持っている)。ヴェンダースは、ポールを現実の極右アメリカ人として描きたいのではなく、彼を通してアメリカ人の理性に訴えたかったように思われた。その意図は解るとしても、ぼくにはそれは詰めの甘さに思われた。
無垢なラナがポールにもっと食い込んで、それによってポールだけでなくラナ自身も変わってゆく処が見たかった。彼らが生きた人間になり切れずに、ヴェンダースによるアメリカ合州国の透写板になってしまっていたのは残念だ。
バート=ヤングが出てたね。
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