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[コメント] ランド・オブ・プレンティ(2004/米=独)

信じられるアメリカの物語
磐井ガクラン

例えばゴダールの「アワーミュージック」のような奇跡的な美しさを持った作品ではない。傑作というわけでもないだろう。でも大好きな映画だ。そういう映画というものが、ある。

ウェンダースがまだこれほど物語の力を信じていたことが単純に嬉しかった。シンプルで分かりやすい今のアメリカの物語だ。これを観て「タクシドライバー」や「地獄の黙示録」などの病的なパラノイア的アメリカ映画の系譜というのが9.11以降アメリカにおいて作られていなかったのに気付いた。ほんとはウェンダースが撮る前に誰か撮るべきだったんだろう。

ほんとはウェンダースが撮るべき映画ではない。だがもろウェンダースの映画だったのも面白い。1カット1カットがそうだった。パレスチナで 9.11を経験したアメリカ人のラナがLAを観る眼差しの慈愛の深さに慄然とした。軽々しく屋上で踊る姿には本来あるべきはずのアメリカの自由というものなんだろうかと胸が躍った。ラナはアメリカを否定しない。汚いアメリカも美しいアメリカもまるごと受け継ごうとしている。軽軽しく果敢に。信じられる物語だ。

(評価:★5)

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