前作「オールド・ボーイ」ではどちらにも同情できる運命の綾とそれによってもたらされる不条理感が物語に深みを与えていたが、今回は犯人側に同情の余地なし。

したがって一方的な復讐でミステリアスな展開に欠ける。というよりパク・チャヌクも言ってるような贖罪のニュアンスが強い。

しかし捕まってからと刑務所時代ばっか描かれて、“その前”が足りないので、どうして彼女がそこまでして贖罪へと突き進ませるのかいまいち理解できず感情移入しづらい。

「復讐3部作」という先入観がある上に自分の頭が悪いのも重なって“復讐モード”で見ていたから、被害者の家族たちを巻き込んだ所で、どうしてパーソナルな復讐から離れていくのかと思ってテンション下がっちゃった。

映像的にはさすがの一言で、特に前半は時制を混ぜ合わせたスピーディーな画繋ぎが素晴らしく、チェ・ミンシクが出てきて食事のアップのシーンではゾクゾクさせられたんだけど・・。

刑務所時代の描写は、彼女の変身を見せるためにも必要だったとは思うが、直接関係のない者を巻き込み過ぎるし、犯人の妻になって体を許すなんてことまでさせる人望が彼女にあったのかどうか。設定が強引というか粗さが目立つ。残酷描写以外に驚きや謎が無いのも痛い。

刑務所の囚人や被害者の家族を絡ませるところは、イ・クムジャにある種パブリックな処刑人あるいはポスターに見られるような聖女のイメージも感じられた。それだけに、娘とのやりとりも含めてイ・クムジャ自身の贖罪とどっちつかずな感じになってしまったのが残念なところ。

ソン・ガンホなど数人のカメオも面白かったが、情念の世界に水を差したようで本筋への集中を妨げたと思う。チェ・ミンシクですら「オールド・ボーイ」の残像が強く残っているのでああいう役はやめて欲しかった。頭の中でずっと本田博太郎にすり替えて見てたもん。

相変わらずブラックな笑いは良かった。白い豆腐→白いケーキへのつなぎとその味わい方もなかなかツボ。（☆3.5）