[コメント] ロード・オブ・ウォー 史上最強の武器商人と呼ばれた男(2005/仏=米)
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まずは本作は正直な話で驚いた。
このテーマをアメリカでやるのか?いや、やれるのか?という新鮮な驚き。実際本作はハリウッド・メジャーの作品ではない。いくら作ろうにもそっぽ向かれてしまうだろう。しかしそれをインディーズではなく世界公開に持って行けるというのは、アメリカの表現の自由もまだまだ捨てたものではないのかもしれない。
本作の最大の特徴は、何にも包まずストレートに大国批判をしている事。これはかつて『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)でもムーア監督が触れていたが、銃の輸出国の大部分は大国であり、その多くはアメリカである。ユーリー自身も「俺が一年かけて取引する量を大統領は一日でやってのける」と言っているくらいだ。その事実は誰でも知ることであるにも関わらず、それをストレートに語ることは実に少ない。しかもそれを本当に切実なものとして受け取る機会というのは更に少ない。事実『ボウリング・フォー・コロンバイン』よりもはるかにこちらの方が胸に来る。結局個人の銃輸出者とは、面だって国でフォローできないことをやっているという、結局は国の出張機関のようなものだから。
いくら映画は物語と言っても、実在の人物を描くのに、そこまでやるか?と思った時、自分自身がそう言うことに目を向けようともしてなかったという事実に気づかされた。
当たり前のことを当たり前のように言う。そんな当たり前のことに驚かされたわけだ。目の前にあり、知っているのに、周知の事実だから。としてそれを考えることを避けてる事ってたくさんあるのだろう。私自身そういう人間なんだな。
キャラクタに関してはやっぱりケイジはこういう役は上手い。下手にヒーロー役をやるよりも、『リービング・ラスベガス』(1995)に見られるような、不器用な、こうやって生きることしか出来ない。という役の方がはるかにはまる(ラスト、全てを失っても、やっぱり武器輸出を続けざるを得ず、それがオープニングと重なるシーンは見事な演出。最初の語りかけは、なんと現在進行形なのだ)。それに真面目役が似合うホークもその本領発揮という役柄を見事にこなしていた。
ただ、物語自体は前半部分があんまりにもあっさりしすぎの感があり、後半は説教じみてしまったという難点は確かにある。色々障害があって、それでも徐々にのし上がっていく過程が観たかったんだけど、あっさり一言回想だけで終わらせてしまったのは勿体ない。過程をあっさり描くのはニコル監督の特徴かな?それがこの監督の味だけど、後味の悪い作品を作るんだったら、前半部分はもっと盛り上げて然りだったんじゃないだろうか?そうすれば後半の落差をもっと派手に演出できたはず。
それに微量の軍オタ傾向を持つ身としては、次々に出てくる兵器の数々(その大部分はAK-47だけど)存分に楽しめたのも良し。年末の新作ラッシュにあって今ひとつ知名度は低いけど、はまる人にははまれる。
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