[コメント] 赤ひげ(1965/日)
赤ひげ流
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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長崎は言わずと知れた日本における近代医学発祥の地。ポンペが開設した長崎養生所などは松本良順、佐藤舜海ら近代日本医学を代表する医者を輩出したことで有名である。彼らの多くはもとは漢方医。この時代の若き医師にとっての長崎行きは、漢方から蘭方への転向以上に、精神的な覚醒に近いものがあったに違いない。
このように前途に計り知れない希望を抱いた長崎帰りの保本は、江戸の赤ひげを尋ね、そのままそこで住まされる羽目になる。対面後、しばらく保本が黙りこむのも無理はない。医師の派閥争いが表面化した世相にあって、赤ひげは「蘭方」でも「漢方」でもない「赤ひげ流」なのだ。彼の黙りこんだ姿勢は、(見かけ上の赤ひげへの抵抗ではなく、)「これでも医学なのか?」と、混乱するより他のない状態を示していたのだろう。
勝手にノートを写し取った赤ひげを責める保元に、赤ひげは「医学は万人のものだ」とすばり言う。この一言が保本を真の覚醒に導いたのは言うまでも無い。
赤ひげは、患者との問診により、患者の抱える問題をずばりと見抜く。保本はただ同席することでその手法を体得していく。今では当たり前となった問診。何を隠そう、問診こそ、当時の蘭方、漢方でもない、赤ひげ流の真骨頂なんだと思う。いくつかの患者のエピソードはこれを良く物語っていた。
更には、保本を連れ、娼館では社会の抱える病をも荒治療する。ほんと、治療法から伝授法まで、何から何まで「赤ひげ流」なのです。
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