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[コメント] ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!(2005/英=米)

よく出来ている。が反面突き抜けてくれないもどかしさもある。まぁそもそもハードル高いっちゃ高いからなぁ。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 このシリーズが今まで爆発的に好評だった要因を考えてみます。キャラクターの魅力やストーリー構成の妙、シニカルな笑い、そして何より「粘土なんかで作ったキャラクターが見せる、ありえないほどハイテンションな動き」。それは『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』における機関車のシーンであり、『ウォレスとグルミット 危機一髪!』でのバイクのシーンだったりするわけです。短編であるというアドバンテージを差し引いても、上記のシーンのテンションは明らかに突き抜けていた。その突き抜けたテンションを粘土のコマ撮りで作っているという“効率の悪さ”が、そのまま「ちょっと狂った美しさ」となって観客の心に伝わっていたんだと思います。

 というわけで今作なのですが、何よりまずはとてもよく出来ています。絶妙に配置された小道具の使い方なんかは大変に見事だし、「実はハッチが、と思わせておきながらウォレスこそがウサギ男だった」なんて展開は気持ちいいくらい楽しい。凡百の実写・アニメ映画に比べれば、これだけでもう「大変によくできている」映画だと思います。

 ただ一点残念だったのが、今作には上記の“突き抜けた瞬間”がなかったんです。ウサギ男に変身するシーンの精緻さやクライマックスのドッグファイトでは非常にいいところまでいってた気がするんですが、やっぱりどうしても前作までのハイテンションには届いていない。プロペラで飛行機のお尻を削るシーンなんて「おっ、ここからどうなるんだ?」って思ったんですけど、そこから「えぇ!?」には至らなかった。その代わりにそこに置かれたのが機体で金のニンジンを受け止めるラストへの展開であり、それは映画的には大変正しいんだけれど、反面このシリーズとしてはちょっとお行儀が良すぎるような気もするんですよね。

 やっぱり90分という長尺では、ある程度“映画”であることを余儀なくされてしまうんでしょうか。一つのネタで引っ張れる時間ではないってことが大きいのかも知れません。いろいろな話を散らすのは確かに面白いんだけど、代わりに「一点突破のハイテンション」は出てきづらいってことなんだろうと思いました。

 そんな中で最終的に心に残ったのは、ウサギ吸い込みマシーンの一連のシーンでした。喋っている連中の後ろでズルズルと吸い込まれていくウサギは確かに“ちょっと狂って”て、その後ガラスケースの中でクルクルと舞っている彼らは“ちょっと美しかった”。前の作品と比べて何だかんだと言いましたが、結局こんなシーンが見れたのでそれなりに満足だったりもします。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)DSCH 赤い戦車[*] Lostie わっこ OK づん maoP ゆーこ and One thing[*] イライザー7

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