[コメント] ユナイテッド93(2006/仏=英=米)
見ている最中、気づくと、貧乏ゆすりをしていた。退屈なのではない、ハイジャックを巡る画面からのストレスに耐え切れず、イライラしていたのだ。クライマックスに及び緊張感は頂点に達する。乗客側、犯人側、敢えてどちらにも肩入れしない描写ゆえに、双方の立場の緊張により息つく暇もない。そして、見終えた後は、脱力感とともに、テロを巡る現実に思いを馳せる。
ドキュメンタリー風の描写による迫力は、疑似体験を思わせる現実味に満ちている。出てくる全ての人々に日常があり、全ての人々に意味があり、そして一部の人々の日常は途絶える。日常とは脆く儚いものだけど、突然の事故が日常の延長であるように、テロもまた……。
この作品は物語性を排しているので、なぜ彼らがテロを起こし、なぜ彼らがテロに会うのかの説明は無い。仕方なくテロを実行する側に回ってしまったり、ある日突然テロに巻き込まれたり、といった理不尽な運命がふりかかる人間達の無力さが時系列で並ぶだけだ。911には謎も多く、全てが解明された訳ではない。しかし、死者が出ていることはたしかである。そうした死者の日常を擬似体験することは、現在、第三者が事件に関わる上で有意義な行為だろう。
事件の背景を知るには、もっといろいろなリソースを得なければならないが、個人的には、この作品のような緊急事態が続く中、訪問先の小学校で何も出来ないでいた(もしくは放置していた)、『華氏911』でのブッシュのうつろな顔が印象的である。国民の危機感の最中の大統領の表情が示すものこそ、国家と個人の間の理不尽さだろうと、思ったりしている。
まだまだ、いろんな思いが頭に浮かぶが、これくらいにしておかないとキリがない。ホントに、刺激の強い作品だった。
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